― 砂浜から海へ向かう小さな影。その行く先には、何千キロも続く広い外洋がある。ウミガメは、海の中で暮らしながら、産卵の時だけ陸に戻る特別な生活史を持つ。流線形の体、強いヒレ脚、深い海へ潜る能力――どれも長い回遊を支えるために進化してきたものだ。
この章では、ウミガメ類の特徴・生態・回遊・産卵・種類ごとの違いを整理し、“海を旅するカメ”の姿を見つめる。
📘 基礎情報(ウミガメ類)
- 分類: カメ目 ウミガメ科・タイマイ科 など
- 分布: 世界の温帯〜熱帯海域
- 主要種: アオウミガメ/アカウミガメ/タイマイ/オサガメ
- 体長: 70cm〜2m(種により差)
- 食性: 海藻・甲殻類・海綿・クラゲなど
- 寿命: 50〜80年以上
- 繁殖: 砂浜に産卵(1回50〜150個)、回帰性が強い
🐢目次
- 🌊 1. 特徴 ― 流線形の体とヒレ脚がつくる“海の形”
- 🧭 2. 回遊と移動 ― 数千キロを旅する方向感覚
- 🥚 3. 産卵と成長 ― 砂浜への回帰と子ガメの旅立ち
- 🐢 4. 種類ごとの特徴 ― アオ・アカ・タイマイ・オサガメ
- 🌙 詩的一行
🌊 1. 特徴 ― 流線形の体とヒレ脚がつくる“海の形”
ウミガメは、海を長く移動するための身体構造を持つ。
- 流線形の体:水の抵抗を最小限にする形状
- ヒレ脚:前脚は推進力、後脚は方向調整
- 厚い皮膚と脂肪:低い水温にも耐える
- 長時間潜水:血液に酸素を蓄える能力が高い
地上の歩行は苦手だが、海中では驚くほど滑らかに泳ぐ。
🧭 2. 回遊と移動 ― 数千キロを旅する方向感覚
ウミガメは、海流・水温・地磁気を手がかりに数千キロを旅する回遊性をもつ。
- 回遊ルート:大陸棚→外洋→沿岸を季節ごとに移動
- 地磁気の利用:地球の磁場を“地図”として使う
- 餌場と産卵地:海域ごとに使い分ける
- 回帰性:生まれた浜に戻る習性がある
ウミガメの旅は長く、種によっては数年かけて太平洋を往復する。
🥚 3. 産卵と成長 ― 砂浜への回帰と子ガメの旅立ち
ウミガメの産卵は、海と陸が交わる短い時間だ。
- 夜間に上陸:外敵や熱を避けるため
- 深い穴を掘る:湿度と温度が安定する場所
- 多数の卵:一度に50〜150個、季節中に複数回
- ふ化:子ガメは夜に一斉に海へ向かう
子ガメは海に入ると、海流に乗って外洋へ出ていき、数年を“成長の海”で過ごす。
🐢 4. 種類ごとの特徴 ― アオ・アカ・タイマイ・オサガメ
ウミガメ類はいくつかの代表種に分けられ、それぞれに生活の特化方向がある。
✔ アオウミガメ
- 海藻中心の植物食
- 甲羅がなめらかで丸みがある
✔ アカウミガメ
- 強い顎で甲殻類・貝類を砕く
- 日本沿岸で産卵が見られる代表種
✔ タイマイ
- サンゴ礁の海綿を主食
- 甲羅が装飾品に利用され、保全の対象に
✔ オサガメ
- 最大の現生カメ(2mを超える)
- クラゲ食が中心で、外洋性が強い
同じ“ウミガメ”でも、食性・形態・暮らす海域は大きく異なる。
🌙 詩的一行
長い波の下をゆっくり進む影は、海の道を静かにたどり続けている。
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