🦗鈴虫8:声を聴く国 ― 虫の音と日本人

スズムシシリーズ

― 風情という耳 ―


🗂目次


🍃音を聴く文化

夜の虫の声を、
「うるさい」と感じる国もある。
だが日本では、昔からそれを“美しい音”と呼んできた。

耳で季節を感じ、
音に心を重ねる文化。

それは、自然の中に“意味”を見つける民族の耳。
風の音、川の音、虫の音――
すべてが生きものの言葉として聴かれてきた。


🌾鈴虫の季節

平安の昔から、秋の虫の声は文学に登場する。
『源氏物語』にも『枕草子』にも、
夜を彩る鈴虫の音が描かれている。

「声の秋」とも呼ばれ、
涼しさの中に響くその音は、
夏の喧噪を洗い流すような清涼を持つ。

人はその音に、季節の移ろいを聴いた。
そして、心の静けさを思い出した。


🎐風情という感性

風情とは、
見えないものを感じる力のこと。

鈴虫の声を聴いて、
秋の夜の空気を思い描けるのは、
この感性が生きているからだ。

虫の音は、
日本人にとっての「静けさの象徴」。
沈黙の中に響く音が、
心の奥の静寂と共鳴する。


🌙音を受け継ぐ心

いまも、
家の軒先や寺の庭で鈴虫を飼う人がいる。
それはただの鑑賞ではなく、
音を受け継ぐ行為だ。

その響きが途絶えないように、
誰かが次の季節へ命をつなぐ。

“聴く”という文化が、
この国の静けさを守っている。


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