日本の魚が静かに減り続けている。
― 漁獲量は40年連続で低下、食卓にも変化が現れ始めた(2025年11月)
かつて「魚の国」と呼ばれた日本。
しかし今、その姿は大きく変わりつつある。
水産庁の統計では漁獲量は40年連続で減少傾向にあり、家庭での魚の消費量も同じ流れをたどっている。
■ 40年減り続ける漁獲量 ― 日本の海に何が起きたのか
日本の漁獲量は1984年をピークに、長い下り坂を歩んでいる。
要因はひとつではなく、次のような多層的な変化が同時に進んでいると考えられている。
① 海水温の上昇
・魚の産卵期がずれる
・幼魚が育ちにくい
・高水温を嫌う魚種が北上
② 海藻の衰退(磯焼け)
・藻場は“海のゆりかご”
・黒潮の強い年は藻場が大規模に減少
・幼魚が身を隠す場所が消える
③ 潮の流れの変化
・黒潮の蛇行(大蛇行)は魚の回遊ルートを大きく変える
・サンマやイワシが沿岸に寄りにくくなる
④ 海底環境の悪化
・酸素が薄い“貧酸素水塊”の拡大
・底生生物が激減する地域も
⑤ 過去の乱獲の影響
・資源が回復しきらないまま低水準で推移
・漁獲枠(TAC)を守っても回復が遅い魚種が増えている
これらはすべて、「海そのものが長い時間をかけて変わってきている」ことを示している。
■ そして、魚を“食べる量”も減り続けている
水産物の消費量は1980年代をピークに下降線。
現在はピーク時の50%以下に落ち込んでいる。
・魚は調理に手間がかかる
・肉類が安く手に入りやすくなった
・家族形態の変化(核家族・単身)
・“骨が嫌われる”という嗜好の変化
・若者の魚離れ
さらに、そもそも漁獲量が減ったことで、
“市場に並ぶ魚の種類が減った”という構造的な変化も重なる。
■ 海と食卓は見えない糸でつながっている
魚が減れば、価格が上がり、家庭の食卓から遠ざかる。
食べる量が減れば、漁業の収入が減り、漁村は衰退する。
その一つひとつは小さな変化でも、
積み重なると「海の文化」そのものが揺らいでしまう。
浜辺では今日も波が寄せて返す。
しかし、海の底で起きている変化は、
静かに、ゆっくり、未来の食卓へ届いていく。
🌊 せいかつ生き物図鑑・国内ニュース編
― 海と暮らしの変化を読む観察記 ―出典:水産庁「水産白書」2025/地方漁協・環境調査(2023–2025)
🐟前回の記事→伊勢エビが獲れない海へ― 養殖マダイなどで病気が拡大、沿岸が揺らぐ
📖 他の記事はこちら
コメント