🌍 世界11:揺れる海の秩序 ― 南極オキアミ漁の拡大提案

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食物網の根を揺るがす「倍増案」が投げかける問い(2025年11月2日)

南極海の冷たい海流の中を漂う、小さな生命。
それがオキアミだ。
長さわずか数センチの甲殻類だが、
クジラ・アザラシ・ペンギン・魚類――
多くの命を支える、海の「根」である。

そんなオキアミをめぐって、いま国際社会が揺れている。
ノルウェーが、南極海におけるオキアミ漁獲量を倍増させる提案を提出したのだ。
目的は水産資源の確保とオメガ3油の需要増加への対応。
だが、南極の生態系研究者たちは強く警鐘を鳴らしている。

「南極の海で起きることは、地球全体に影響する」
彼らがそう語るのは、オキアミが海洋食物網の“基礎”に位置するためだ。
もし漁獲が増えれば、
それを食べるペンギンやクジラの個体数減少につながるおそれがある。
さらに、オキアミは海中の二酸化炭素を取り込む役割も担う。
つまり、気候変動とも密接につながっている。

国際協議を主導するCCAMLR(南極の海洋生物資源保存委員会)は、
「科学的根拠に基づく漁業管理が不可欠」との立場を維持。
だが経済的圧力は強く、合意は難航している。

人は、海の“根”に手を伸ばそうとしている。
目に見えないバランスの上に立つ私たちは、
どこまでを「利用」と呼び、どこからを「破壊」と呼ぶのだろう。

南極の静かな海面の下で、
オキアミたちは何も知らずに群れを成す。
その小さな命が支えているのは、
ペンギンの翼でも、クジラの歌でも、
そして人の暮らしそのものでもある。

🌏 せいかつ生き物図鑑・世界編
― 変わりゆく地球を見つめる観察記 ―

出典:CCAMLR/BBC/The Guardian/Reuters

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