サクラの花が散ると、
その出来事は終わったように見える。
だが、植物としてのサクラにとっては、
ここからが次の段階だ。
花の中心にあった部分は、
少しずつ膨らみ、色を変え、
やがて小さな実になる。
目立たず、
人に食べられることもなく、
多くの場合、気づかれないまま落ちていく。
それでも、この実と種は、
サクラが子孫を残すための唯一の手段だ。
🌸 目次
🍒 1. サクラの実は何なのか
サクラの実は、一般に「さくらんぼ」と呼ばれる。
だが、花見で知られる多くのサクラの実は、
食用のサクランボとは別のものだ。
植物学的には、
サクラの実も、サクランボも、
同じ核果と呼ばれる構造を持つ。
- 外側:果肉(薄く、甘くない)
- 中心:硬い殻に包まれた種
花見のサクラでは、
果肉は小さく、渋みが強い。
それでも、この実は、
食べられるために存在しているわけではない。
🌱 2. 種を残すという役割
実の本来の目的は、
種を守り、運ぶことだ。
サクラの種は、
硬い殻に包まれ、
外部からの衝撃に強い。
発芽には、
時間と条件が必要で、
すぐに芽を出すわけではない。
- 必要条件:低温期間(休眠)
- 発芽:翌春以降
この遅延は、
環境が整うまで待つための戦略だ。
種は、
急いで増えるよりも、
確実に残ることを優先している。
🐦 3. 鳥と実の関係
サクラの実は、
人には魅力的でなくても、
鳥にとっては重要な食料になる。
ヒヨドリやムクドリなどが、
実をついばみ、
種を遠くへ運ぶ。
- 果肉:鳥の栄養
- 種:未消化のまま排出
- 結果:分布の拡大
サクラは、
自分で移動できない代わりに、
他者に運ばれる仕組みを選んだ。
目立たない実にも、
確かな役割がある。
🌸 4. なぜ食べられる実にならなかったのか
サクラ属の中には、
食用に適した実を持つ種もある。
だが、日本で「サクラ」として扱われてきた系統は、
花に価値を置かれてきた。
人は、
甘い実を選び、育てる代わりに、
花の量や一斉性を重視した。
その結果、
サクラは「見る木」として洗練され、
実は副次的な存在になった。
それは、
進化というより、
人為的な方向づけの結果だ。
🌙 詩的一行
サクラの実は、祝われなくても、次の春を静かに運んでいる。
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