―せいかつ生き物図鑑・雑学シリーズ―
熊は冬のあいだ、深い森で長い眠りにつく。
だがそれは「完全な眠り」ではない。体温を少し下げ、心拍をゆっくりにしながら、
まるで呼吸するように静かに冬をやり過ごしている。
冬眠中の熊は、食べず、飲まず、排泄もしない。
それでも筋肉が衰えないのは、体内で尿素を再利用し、
たんぱく質を再合成するという独特の仕組みを持つからだ。
人間にとっては夢のような生理機能――自然の中の医学と言っていい。
熊は、古くから「山の神」と呼ばれてきた。
アイヌの言葉でキムンカムイ、本州の山里では“お客”とも呼ばれ、
狩猟民たちは命を奪うのではなく、命を授かる行為として熊を祀った。
熊は恐れと尊敬のあいだにいる存在だったのだ。
春、熊が目を覚ますと、山もまた目を覚ます。
その姿に人は再生を見てきた。
眠ること、祈ること、生きること――それらは同じ流れの中にある。
熊は今日も、山の奥で静かに息をしている。
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