🍄きのこ10:ワライタケ ― 狂気の笑い

笑いが止まらないとき、それは森の声かもしれない。


分類:担子菌類 ハラタケ目 フウセンタケ科
学名Gymnopilus junonius
分布:日本全国(広葉樹林、針葉樹林、庭園など)
発生時期:夏〜秋
大きさ:傘径5〜20cm前後
毒性:神経毒(幻覚・興奮・錯乱・笑い発作など)
主な毒成分:サイロシビン、サイロシン
食用/毒性:毒(食用不可・幻覚性あり)


最初に見た者は、笑う。
理由もなく、ただ笑い出す。
ワライタケに含まれる毒は、
人の脳を軽く浮かせるようにして、
感情の境界を溶かしていく。

森の中で、
その笑い声だけが響く。
やがて笑いは止まらず、
狂気と静寂が交わる。


🌕 笑うという中毒

ワライタケの毒――サイロシビン。
それは幻覚を引き起こし、
脳の神経伝達をかき乱す。
視界がゆがみ、
時間の感覚が消える。
そして、人は笑う。

それは幸福の笑いではない。
恐怖とも違う。
“理性が外れた音”だ。
森が人に与える、
一瞬の“解放”と“崩壊”のあいだ。


🌲 森の幻覚

古くから、ワライタケは信仰の場でも見られた。
巫女や修験者がこのきのこを口にし、
神と交わるための儀式に用いたという。

笑いの中で我を失い、
自我を森に委ねる。
その状態こそが、
森と人が一体になる“境界”。

だが、現代ではそれは狂気と呼ばれる。
森が見せた幻は、
いまや社会の病として扱われる。


🌙 森が笑う夜

夜の森を歩くとき、
時折、どこからともなく笑い声が聞こえる。
風か、木か、幻か。
けれどそれは、森がまだ
人のことを観察している証だ。

笑いとは、森が心に触れたときの反応。
毒きのこは、人の内側を鏡のように映す。


✨詩的一行

森が笑うとき、人は正気を試される。
その笑いの中に、真実がある。

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