すべての命は、土の下でひとつになる。
森の底では、
音もなく時間が食べられている。
落ちた葉、倒れた木、
風に吹かれた実のかけら。
それらは地面に沈み、
やがて菌糸の白い糸に包まれる。
菌は、時間を食べる。
昨日を今日に変え、
死を生の中へ戻していく。
その過程で土は柔らかくなり、
森は再び息をする。
🌱 土の中の会話
人はふだん、地面を“静かなもの”と思っている。
けれど耳を澄ませば、
そこには無数の命の会話がある。
菌が木の根と手をつなぎ、
水を渡し、栄養を交わす。
そのやりとりは、森の地下に広がる見えない通信網。
一本のきのこは、その声の出口にすぎない。
森の上では葉が光を受け、
森の下では菌が時間を分け合う。
その循環があるからこそ、
季節は繰り返し、森は枯れない。
🍂 人の記憶と土の声
人が亡くなったあと、
身体は土に戻る。
そこに菌が集まり、
時間をほどいていく。
そうして分解されたものが、
また木の根に吸われ、
新しい葉を生む。
つまり、私たちの記憶も、
森の中で形を変えて生き続けている。
きのこを食べるということは、
その大きな循環のほんの一部を受け取ること。
土の声を、
ひとくち分けてもらうこと。
✨詩的一行
時間を食べて、森は呼吸する。
その息の中に、私たちの記憶がある。
 
  
  
  
  
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