🦀蟹11:ヒライソガニ ― 風の残る岩陰で

カニ(海)シリーズ

― 岩の陰に身を寄せ、風が通ると素早く姿を隠す。ヒライソガニは、潮間帯の岩礁でよく見られる大きめのカニだ。力強い脚と平らな甲羅は、乾きやすい岩場で暮らすための形で、イソガニよりも存在感のある姿をしている ―

海岸の岩場に広く生息し、干潮時には岩の表面を歩き回る。見た目が似たイソガニと混同されやすいが、体つきや行動にいくつかの違いがある。ここではヒライソガニの特徴、生態、行動を整理していく。

📘 基礎情報

  • 分類:節足動物門 甲殻亜門 十脚目 ベンケイガニ科
  • 学名:Hemigrapsus crenulatus(※近縁種含む)
  • 分布:北海道〜九州の岩礁海岸・潮間帯
  • 生息環境:潮間帯上部〜中部の岩の隙間・日陰・転石下
  • 大きさ:甲幅3〜4cm前後(イソガニより大型)
  • 食性:藻類、付着生物、小型動物、有機物などを食べる雑食性
  • 特徴:乾燥に比較的強く、陽の当たる岩場でも活動

🦀目次

1. 平らな甲羅と力強い脚 ― ヒライソガニの体の特徴

ヒライソガニは、イソガニに比べてやや大きく、甲羅が平らで、脚が太い。乾きやすい岩場でも動きやすい形が発達している。

  • 甲羅は平らで幅が広く、岩の割れ目にフィットしやすい
  • 脚が太く、踏ん張りが効きやすい
  • ハサミはやや大きく、藻類をこすり取るのに向く
  • 体色は茶〜黒で岩の色に紛れやすい

形の違いを知ると、イソガニとの識別も容易になる。

2. 乾きやすい岩場に適応した暮らし

潮間帯上部に多く、乾燥しやすい環境に適応しているのがヒライソガニの特徴だ。

  • 陰のある岩の割れ目に潜み、水分を保つ
  • 日差しが強いときは岩陰を選んで移動
  • 干潮時は積極的に餌を探しに出る
  • 波が届く範囲よりも“少し上”に生息することが多い

乾燥に強い分、行動できる範囲もイソガニより広めだ。

3. 食性と行動 ― イソガニとの違い

ヒライソガニとイソガニは生息域が重なるが、食べ物や行動に違いがある。

  • 藻類をこすり取る動きが多く、植物性の割合が高い
  • 小型動物や有機物も積極的に食べる雑食性
  • 縄張り意識が強く、同種と威嚇し合うことがある
  • 動きは素早いが、イソガニほどは俊敏ではない

岩場に強い体と安定した行動が、潮間帯上部での生活を支えている。

4. 人との関わり ― 岩礁の生態系を支えるカニ

ヒライソガニは海岸の岩場でよく見かけられるカニで、磯観察でも定番の存在だ。藻類を食べることで岩礁のバランスを保つ役目も持つ。

  • タイドプールより岩礁の“乾き気味”の場所に多い
  • 見つけやすく、観察教育でも扱いやすい
  • 藻類の量を調整し岩場の生態系に関与する

身近な場所にいながら、環境変化の指標にもなりうるカニだ。

🌙 詩的一行

風をはらんだ岩陰で、小さな影が静かに海の呼吸をうかがう。

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