🎃かぼちゃ5:西洋カボチャ C. maxima ― 甘みの記憶

カボチャシリーズ

― 粉質の果肉に宿るもの ―

分類:ウリ科カボチャ属 (Cucurbita)
学名:Cucurbita maxima Duchesne
和名:セイヨウカボチャ
原産地:南アメリカ(アンデス高地周辺)
分布:世界各地で栽培、日本では北海道・東北地方を中心に普及
特徴:果皮が硬く、果肉は厚く粉質。追熟で甘みが増す。
生態:一年草。温暖期に生育し、夏に開花、秋に成熟。
用途:食用(煮物・スープ・菓子など)、貯蔵性が高い。
備考:日本では「栗かぼちゃ」として定着し、秋冬の食卓に広く親しまれる。

収穫したばかりの西洋カボチャを切ると、
果肉は黄色く、中心に向かって淡い橙に変わる。
断面は乾いており、触れると粉がつくような質感がある。
甘みは、時間とともに増していく。
秋の空気とともに、実の中で糖が熟していく。


🟠 外見と構造 ― 丸く厚い果肉

西洋カボチャは果皮が厚く、表面の凹凸が少ない。
色は深緑から灰色まで幅があり、切ると内部は黄橙色。
果肉は密度が高く、加熱するとほくほくと崩れる。
果皮の硬さは乾燥地に適応した結果であり、
長期間の保存を可能にしている。

🟡 甘みの仕組み ― 追熟という変化

成熟期に蓄えられたでんぷんは、収穫後の数週間で糖に変化する。
温度が15〜20℃前後で保たれると、この反応が最も進む。
この過程を「追熟」と呼び、
甘みと香りが増すと同時に果肉が柔らかくなる。
科学的には、でんぷん分解酵素の働きによるものだが、
台所ではただ「置いておく」時間として知られている。
時間そのものが、調味料のような役割を果たしている。

🍽️ 利用と文化 ― 日本の食卓の定番へ

明治時代以降、北日本を中心に栽培が広まった。
「えびす」「みやこ」など多くの品種が生まれ、
現在では日本の“カボチャ”の代表格。
煮物、天ぷら、スープ、菓子など、
どの家庭にも季節の甘みとして残る。
そのほくほくとした食感は、
寒い季節の温もりの記憶と結びついている。

🌙 詩的一行

甘みは、待つことの中で実になる。


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