🐟イワシ4:マイワシ ― 海を満たす魚 ―

イワシシリーズ

― 数は、力であり祈りである ―

マイワシは、日本の海を代表する魚だ。 群れの規模は数十万、時に数億匹にも達する。
海を覆い尽くすほどの群れが現れると、 それは海そのものが“息づく”ような光景になる。

けれど、豊漁の年もあれば、不漁の年もある。 マイワシの数は、気候や海流の変化に敏感に反応する。
増えることも、減ることも、海の記憶の一部。 その波の中で、命の循環が続いている。


📘分類・基礎情報

  • 分類:ニシン目 ニシン科 マイワシ属
  • 和名:マイワシ(真鰯)
  • 学名:Sardinops melanostictus
  • 分布:北西太平洋。日本・韓国・中国沿岸からロシア東岸まで。
  • 体長:15〜20cm前後
  • 体重:30〜60g
  • 食性:プランクトン中心。時に小型甲殻類を摂取。
  • 特徴:体側に黒い斑点。資源変動が大きく、豊漁期と不漁期が周期的に訪れる。

🌾目次


🌊 豊かさの象徴 ― 数で生きる魚 ―

マイワシは「数で生きる」魚だ。 個体は小さく、弱い。だが、群れを成せば海の風景が変わる。
群れが沿岸に現れると、鳥が舞い、イルカが追い、 ブリやマグロがその波に乗る。
マイワシが来れば、海が豊かになる――そう言われてきた。

その多さは命の基盤。 彼らがいる限り、海はつながりを保てる。 数こそが、海の呼吸の証なのだ。


🌍 資源の波 ― 海の時間に生きる ―

マイワシの資源量は、10〜40年周期で増減する。 この「資源変動」は、海流と水温、プランクトン量に深く関係している。
豊漁期には日本列島全域で群れが見られ、 不漁期には南方の海に退く。 その周期は、海の呼吸そのものだ。

人はその変化を「イワシが帰った」「イワシが眠った」と表現した。 海の機嫌を感じ取る言葉。 科学がその原因を探るよりも前から、 人々は海とともに、イワシの時間を生きてきた。


🍴 人とマイワシ ― 海を食べる文化 ―

煮干し、干物、丸干し、蒲焼き、寿司。 マイワシは日本の食文化を形づくってきた。 旬は冬から春、脂がのった「寒イワシ」が格別だ。
その旨味は、海そのものの味といわれる。

江戸時代には、肥料「干鰯(ほしか)」としても重宝された。 海の恵みは陸へも届き、田畑を潤した。 マイワシは、海と陸をつなぐ“命の架け橋”でもある。


🌙 詩的一行

群れは、海の祈りのかたち。


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