小さく、赤く、海を漂うエビがいる。サクラエビは、海底を歩く多くのエビとは異なり、浮遊する生活を選んできた。
その姿は季節とともに現れ、短い時間だけ人の前に姿を見せる。大量に獲られ、すぐに姿を消す。その繰り返しが、このエビの特徴でもある。
サクラエビは、場所と時期が重なったときにだけ成立する漁とともに生きてきた。
ここでは、漂うエビとしてのサクラエビを見ていく。
【基礎情報】
- 和名:サクラエビ
- 別名:桜海老
- 英名:Sakura shrimp
- 学名:Lucensosergia lucens
- 分類:節足動物門/甲殻亜門/軟甲綱/十脚目/サクラエビ科
- 分布:日本(駿河湾)・台湾周辺
- 主な生息環境:沖合の中層(水柱)
- 水深:日中200〜300m/夜間は浅層へ移動
- 体長:約4〜5cm
- 食性:プランクトン
- 繁殖:浮遊生活の中で行われる
- 特徴:半透明の赤い体色
- 人との関わり:季節漁・特産品
- 保全・注意点:漁期・漁獲量の厳格管理
🦐 目次
🌊 1. 生活様式 ― 漂うエビ
サクラエビは、底に定着せず、海中を漂う浮遊性のエビである。
- 生活:中層を漂う
- 移動:自力より水流に依存
- 集団:群れを形成
この生活様式は、捕食者から身を守る一方で、流されやすいという性質も併せ持つ。
🔁 2. 日周移動 ― 深さを変える動き
サクラエビは、昼と夜で棲む深さを変える。
- 昼:深い層
- 夜:浅い層
- 目的:捕食回避と摂食
夜間に浅い層へ上がることで、プランクトンを効率よく摂取する。
この動きが、夜間漁を可能にしている。
🛥 3. 漁という接点 ― 瞬間的な大量捕獲
サクラエビ漁は、短期間に集中的に行われる。
- 漁法:夜間の網漁
- 期間:春・秋
- 特徴:一度に大量
漁は資源量を見ながら厳密に管理され、毎年必ず行われるわけではない。
🍽 4. 食文化 ― 乾燥と保存
サクラエビは、乾燥させることで旨味を凝縮させる食べ方が選ばれてきた。
- 加工:素干し
- 用途:かき揚げ・ふりかけ
- 役割:風味の付与
小ささゆえに、素材としての扱い方が洗練されてきた。
🌙 詩的一行
漂っていた赤が、季節の記憶になる。
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