🍄きのこ23:森の終わり ― 毒が残す静けさ

すべてが終わったあと、毒だけが残る。


分類:象徴・終末・再生
対象種例:ドクツルタケ、カエンタケ、ツキヨタケ(象徴的扱い)
分布:人の立ち去った森、荒廃地、静かな山間
関連分野:環境哲学、象徴学、再生生態学
主要モチーフ:沈黙・記憶・循環・再生
扱い:終わりの風景・自然の記録・生命の継承


森が終わるとき、音は消える。
木々のざわめきも、鳥の声も、
雨のしずくも、いつのまにか止む。

ただ、地面の下では
菌糸が静かに広がっている。
枯れた根を食べ、
腐った木を抱き、
新しい命の準備をしている。

その中心に、毒がある。


🌲 毒が守るもの

毒は、森の最後の防衛線。
病んだ木を封じ、
弱った命を止め、
次の命のための空間をつくる。

人がいなくなっても、
毒きのこだけは生き残る。
それは“破壊”ではなく“保存”の仕事。
森の死を受け入れ、次の森を待つ者たち。


🕯 静けさの中の記憶

森が静まると、
土の中に音が戻る。
かつて風が通った道、
獣が歩いた跡。

菌糸はそれらの記憶をたどりながら、
再び繋げていく。
毒はその記憶の“濃縮液”のようなもの。
森の痛みと記憶を、凝縮して次へ渡す。


🌑 毒のあとに芽吹くもの

春が来ると、
静かな地面の上に
新しい命が芽を出す。
その根の奥には、かつての毒が眠っている。

毒は死を閉じる印であり、
同時に再生の土台でもある。
森は、終わりながら生きつづけている。


✨詩的一行

毒が残るのは、森が忘れないため。
終わりの中に、始まりがある。

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