🏞 地方2:森の影 ― 住宅街に現れたクマ

地方のNEWS

秋の境界と、人の暮らしのかたち

朝の空気がひんやりとしてきた頃、
札幌の住宅街の近くでクマの姿が見られたという。
ニュースの中の出来事に思えるけれど、
そこは人が日々通る道のすぐ脇だった。

山の実りが少なくなるこの季節、
クマは森の奥を離れ、
餌を求めて里へと下りてくる。
木の実や鮭が減る年には、
人の暮らしの匂いが、森の奥よりも魅力的に感じられるのかもしれない。

けれど、森を出たその一歩が、
人の社会では「危険」と呼ばれる。
わたしたちは便利さと安全のために、
自然との境界線を作ってきた。
それでもその線は、秋風に吹かれて簡単に揺らいでしまう。

クマはきっと、迷っているわけではない。
ただ、自分の暮らしを続けているだけだ。
問題なのは、人と自然がもう長いあいだ、
同じ地図の上にいながら、
別々の世界を生きてきたことなのかもしれない。

🏞 せいかつ生き物図鑑・地方編
― 四季をめぐる観察記 ―

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