ナマズは、どこにでもいる魚ではない。
澄んだ渓流の上流でも、波立つ大河の中心でもない。流れがゆるみ、底に泥がたまり、水位が変わる場所。ナマズはそうした「境目」に近い環境を選んできた。
川、湖、沼、そして氾濫原。水が広がり、引き、形を変える場所ほど、ナマズの居場所は増えていく。
この章では、ナマズがどんな環境を好み、どのように分布しているのか――水辺の地形と結びついた生き方を見ていく。
🐟 目次
🌊 1. 川におけるナマズ ― 下流とよどみ
川の中でも、ナマズが多く見られるのは下流域や流れの緩やかな区間だ。流速が遅く、底質が泥や砂であることが重要になる。
- 好む場所:下流・湾曲部。
- 底質:泥・砂。
- 隠れ場:倒木・石の下。
強い流れは必要ない。むしろ、流れが生む「たまり」が、ナマズの生活を支えている。
🏞️ 2. 湖と沼 ― 定着できる水域
湖や沼では、ナマズは比較的定着した生活を送る。水位変動があっても、深みや岸辺に逃げ場があるためだ。
- 環境:湖沼・ため池。
- 行動:行動圏が狭い。
- 利点:餌が安定。
広く動き回らずとも、生きていける条件がそろっている。
🌧️ 3. 氾濫原という環境 ― 水が広がる場所
増水時に一時的に水が広がる氾濫原は、ナマズにとって重要な環境だ。餌が豊富で、外敵も少ない。
- 発生:大雨・雪解け。
- 役割:餌場・繁殖場。
- 特徴:一時的。
水が引けば、ナマズは再び本流へ戻る。変化そのものを利用する生き方だ。
🗾 4. 分布の特徴 ― 世界と日本
ナマズ類は世界中の淡水域に分布しているが、日本では主に本州以南で見られる。
- 世界:熱帯〜温帯。
- 日本:本州・四国・九州。
- 制限:寒冷地では少ない。
水温と水域の構造が、分布を大きく左右している。
🌙 詩的一行
水がとどまる場所に、居場所は残る。
コメント