― カメは派手な動物ではない。速く走るわけでも、強い牙を持つわけでもない。しかし、生態系の中では安定を支える存在として、驚くほど多くの働きをになっている。ゆっくりと水草を食べ、落ちた果実を運び、死骸を分解し、時には水辺の植物を守ることもある。動きは静かでも、その影響は広い。
この章では、カメが自然の中で果たしている食物連鎖・植物循環・環境維持・外来種との関わりを整理し、水辺や陸の生態系における役割を見つめる。
🐢目次
- 🌱 1. 植物食・雑食としての役割 ― 水草・藻類・果実の循環
- 🦴 2. 死骸の分解者として ― 水辺の浄化と栄養循環
- 🌾 3. 植生への影響 ― 水辺の草を“削りすぎず守る”存在
- 🧩 4. 外来種・在来種が持つ生態系インパクト
- 🌙 詩的一行
🌱 1. 植物食・雑食としての役割 ― 水草・藻類・果実の循環
淡水ガメの多くは雑食で、水草・藻類・昆虫・果実などを幅広く食べる。この“幅の広さ”が、環境のバランスに大きく影響する。
- 藻類の増えすぎを抑える:水辺の透明度維持に貢献
- 落下果実を食べる:種子散布の一端を担う地域もある
- 小さな生き物を調整:昆虫や水生生物の過密化を防ぐ
ゆっくり動きながらも、食べる量と範囲が広いため、生態系の基礎を穏やかに支えている。
🦴 2. 死骸の分解者として ― 水辺の浄化と栄養循環
カメは、死んだ魚や生き物の死骸も食べる“スカベンジャー”としての役割を持つ。
- 水質悪化を防ぐ:死骸の腐敗を遅らせる
- 栄養を循環させる:分解を通じて生態系へ戻す
- 浅瀬の清掃者:人が利用する池や河川でも機能
この役割は目立たないが、水辺の環境を守る上で非常に大きい。
🌾 3. 植生への影響 ― 水辺の草を“削りすぎず守る”存在
カメの摂食は、植物を食べながらも環境を破壊しない絶妙さがある。
- 水草の食べすぎを防ぐ:過密な藻類をほどよく抑える
- 在来水草が復活する例:大型外来魚が減ると、カメの調整で保たれることも
- 草本の更新を助ける:ある程度の採食が生育を促すことがある
ウミガメでも同様に、アオウミガメの草食はサンゴ礁の藻類バランスに影響している。
🧩 4. 外来種・在来種が持つ生態系インパクト
カメは環境を支える一方で、外来種が入り込むと大きな変化を生むこともある。
- アカミミガメ:日光浴場所の独占・植物の食害・繁殖力の高さ
- 在来種:バランスの取れた摂食で“調整役”として機能
- ウミガメ:クラゲ・海藻など外洋生態系へ影響
重要なのは、カメそのものよりも、どの種がどんな環境にいるかという組み合わせだ。 在来種が残る環境では、生態系の安定が保たれやすい。
🌙 詩的一行
静かに水を押し分けるその影は、見えないところで世界をそっと支えている。
🐢→ 次の記事へ(カメ20:これからのカメ)
🐢→ カメシリーズ一覧へ
コメント