🐋クジラ7:ザトウクジラ ― 歌い、跳ねる海の巨人

クジラシリーズ

■ 基礎情報

  • 分類: 哺乳綱 ウシ目 クジラ亜目 ヒゲクジラ類
  • 種名: ザトウクジラ
  • 学名: Megaptera novaeangliae
  • 体長: 約12〜16m
  • 体重: 約25〜30トン
  • 分布: 世界中の海。高緯度で採餌し、低緯度で繁殖
  • 食性: オキアミ・小魚(バブルネット採餌)
  • 特徴: 歌・ブリーチング・長い胸ビレ・協力採餌

― ザトウクジラは、その派手なジャンプや複雑な“歌”で知られるクジラだ。
長い胸ビレを大きく広げ、海面を叩き、泡の輪で獲物を囲い込む。
海で最も“表現豊か”なクジラといってよい ―


🪸目次


1. 姿の特徴 ― 長い胸ビレと力強い体

ザトウクジラの最大の特徴は体長の3分の1にも達する長い胸ビレである。

  • 長い胸ビレ(最大5m超)
  • 背中は黒、腹側は白い模様
  • 尾ビレ(フルーク)の模様は個体識別に利用される

体は太く力強く、ブリーチング(海面へのジャンプ)に適した構造をしている。


2. 歌 ― 海に響く複雑なメロディ

ザトウクジラは“歌うクジラ”として知られ、複雑な音の連続を発する。

  • 主に繁殖期のオスが歌う
  • 地域ごとに異なる“方言”が存在
  • シーズンごとに曲が変化する
  • 低周波〜高周波を組み合わせた長い構成

歌は「学習され、共有され、変化する」という点で“文化的行動”と言われる。


3. 採餌行動 ― バブルネットフィーディング

ザトウクジラのもっとも象徴的な行動が、仲間で協力するバブルネットフィーディング

  • 数頭で円を描いて泡の壁(バブルネット)をつくる
  • 小魚を閉じ込める
  • 中心に向かって一斉に突進して捕食

海で見られる協力捕食の中でも、極めて高度な戦略である。


4. 回遊と繁殖 ― 暖かい海で子育て

ザトウクジラは高緯度の海で採餌し、
低緯度の暖かい海で出産・子育てを行う。

  • 夏:北・南の高緯度で餌を食べる
  • 冬:暖かい海へ移動し出産
  • 子クジラは母乳で育つ(濃厚で高栄養)

年間数千キロに及ぶ旅を毎年繰り返す。


5. 行動の多様性 ― 跳ねる・叩く・寄り添う

ザトウクジラは行動の種類が非常に多い。

  • ブリーチング: 海面へ大きくジャンプ
  • テールスラップ: 尾ビレで水面を叩く
  • ペックスラップ: 胸ビレで水を叩く
  • スパイホップ: 頭を出して周囲を観察

社交性が高く、人間に最も観察されやすいクジラでもある。


🌙 詩的一行

白い胸ビレが海を切るたび、響きは遠い海峡にも静かに届いていく。


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