🐟イワシ13:変わる海 ― 水温が描く新しい地図 ―

イワシシリーズ

― 海の温度が、地図をゆっくり書きかえる ―

近年、イワシの群れが北へ移っている。 海の温度がわずかに上がるだけで、 魚たちの暮らす場所は大きく変わる。 黒潮の流れが広がり、親潮の海が後退する。 その変化のなかで、 海の命の地図が少しずつ描き直されている。


🌾目次


🌊 水温の変化 ― 海の境界が動く

日本近海の海流は、黒潮と親潮がぶつかることで豊かな海をつくってきた。 けれど近年、その境界が北へと押し上げられている。 黒潮の蛇行、エルニーニョ、地球の温暖化―― 複数の要因が重なり、海の温度は少しずつ変わってきた。 それは目に見えないけれど、確実に進む「静かな移動」だ。


🐟 群れの北上 ― 適応する魚たち

イワシやサバ、アジなどの回遊魚は、水温に敏感だ。 暖かい海を好む彼らは、年々北の海へと移動している。 北海道の沿岸では、かつて見られなかった群れが確認され、 南では姿を減らしている。 その代わりに南方の魚が顔を出すようになった。

海の世界では、“変わること”が生きること。 群れは、海を読み、風を読み、 新しい海を探して泳ぎ続けている。


🏝 人の暮らし ― 海とともに変わる社会

魚の分布が変われば、漁の形も変わる。 南でサバやイワシが減り、北で増える。 港のにぎわいが移動し、 食卓の季節も静かに入れ替わっていく。
その変化を悲しむのではなく、 どう受け入れるかがこれからの課題だ。 海の変化に合わせて暮らす知恵が、 もう一度問われている。

変わる海を見つめながら、 人の手もまた“柔らかく”なければならない。


🌙 詩的一行

海は動き、人もまたその上を生きている。


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