― 海の温度が、地図をゆっくり書きかえる ―
近年、イワシの群れが北へ移っている。 海の温度がわずかに上がるだけで、 魚たちの暮らす場所は大きく変わる。 黒潮の流れが広がり、親潮の海が後退する。 その変化のなかで、 海の命の地図が少しずつ描き直されている。
🌾目次
🌊 水温の変化 ― 海の境界が動く
日本近海の海流は、黒潮と親潮がぶつかることで豊かな海をつくってきた。 けれど近年、その境界が北へと押し上げられている。 黒潮の蛇行、エルニーニョ、地球の温暖化―― 複数の要因が重なり、海の温度は少しずつ変わってきた。 それは目に見えないけれど、確実に進む「静かな移動」だ。
🐟 群れの北上 ― 適応する魚たち
イワシやサバ、アジなどの回遊魚は、水温に敏感だ。 暖かい海を好む彼らは、年々北の海へと移動している。 北海道の沿岸では、かつて見られなかった群れが確認され、 南では姿を減らしている。 その代わりに南方の魚が顔を出すようになった。
海の世界では、“変わること”が生きること。 群れは、海を読み、風を読み、 新しい海を探して泳ぎ続けている。
🏝 人の暮らし ― 海とともに変わる社会
魚の分布が変われば、漁の形も変わる。
南でサバやイワシが減り、北で増える。
港のにぎわいが移動し、
食卓の季節も静かに入れ替わっていく。
その変化を悲しむのではなく、
どう受け入れるかがこれからの課題だ。
海の変化に合わせて暮らす知恵が、
もう一度問われている。
変わる海を見つめながら、 人の手もまた“柔らかく”なければならない。
🌙 詩的一行
海は動き、人もまたその上を生きている。
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