- 分類: ミカン科ミカン属
- 学名: Citrus junos ‘Tada-nishiki’
- 由来: 徳島県名西郡神山町の多田謙一氏が選抜した無核ユズ品種
- 樹高: 約3〜4m
- 果実: 黄色に熟す香酸柑橘。果汁が多く利用しやすい
- 特徴: 種子がほとんど形成されない無核性品種
- 樹勢: 強く、生育旺盛
- トゲ: 小さく少ない。成木では無刺に近くなることがある
- 用途: 食用、調味、果汁加工、家庭用果樹
生態 ― 種の少ない柚子
多田錦(タダニシキ)は、徳島県名西郡神山町の多田謙一氏によって選抜された無核ユズの品種である。
山口県の友人から譲り受けた無核ユズの中から、トゲの少ない個体を選抜したものとされる。
1977年に品種登録され、「種の少ないユズ」として知られるようになった。
果実は一般的なユズと同様に黄色く熟し、種子が少ないことが最大の特徴である。
果汁利用に適しており、加工用や家庭利用を中心に栽培されている。
樹勢は強く、生育旺盛な品種である。
一方で、トゲは小さく少ないとされ、成木では無刺に近い状態になることもある。
このため管理や収穫がしやすく、家庭栽培や加工用のユズとして利用されている。
文化 ― 生活の中に広がるユズ
多田錦の誕生は、戦後の日本で「使いやすさ」を求めた 家庭向けの果樹栽培の流れと重なっていた。 料理や菓子づくりに使うとき、種を取り除く手間が少なく、 香りも穏やかで幅広い料理に合う。 そのため、家庭用ユズの代表格として普及した。
近年では、徳島や高知などユズの産地でも 多田錦が加工用・搾汁用に導入されている。 「食べやすさ」と「香りの柔らかさ」という特徴が、 消費者の嗜好の変化に寄り添っているのだ。 種を持たないことで、ユズはより生活の中に入り込み、 “やさしい果実”として新しい文化を築きつつある。
詩 ― やわらかな香りの記憶
手に取ると、香りがやわらかく立ちのぼる。 果実の中には、もうほとんど種がない。 軽い重みの中に、静かな香りがひろがる。 それは人の暮らしの中で、少しずつ変わってきた “やさしさ”という香りなのかもしれない。
コメント
2026/06/05追記
読者の方からご指摘をいただき、多田錦の品種特性について資料を再確認しました。樹勢やトゲに関する記述を見直し、参考資料を追加しています。ご指摘ありがとうございました。