【分類】ツツジ目 ツバキ科 ツバキ属 チャノキ
【学名】Camellia sinensis(カメリア・シネンシス)
【原産】中国南部〜東南アジアの山地
【樹高】1〜3m(栽培では剪定により1m前後に維持)
【葉】革質・常緑/新芽は春に萌芽し、一番茶となる
【花】白い五弁花(10〜12月頃)
【実】褐色の蒴果をつけ、1〜3個の種子が入る
【分布】日本各地(静岡・鹿児島・三重・京都など主要産地)
【寿命】数十年〜100年以上育つこともある
【生育環境】温暖・湿潤/霧・傾斜地が品質に影響
【人との関わり】煎茶・抹茶・玉露ほか、多様な製茶文化の基盤植物
― 山の湿り気と朝の光をまといながら、季節の息づかいを葉にためる木 ―
チャノキ(Camellia sinensis)は、日本の飲み物文化を支えてきた常緑の植物だ。
春には柔らかな新芽が萌え出し、夏は深い緑を保ち、秋は花を咲かせ、冬には静かに蓄えに入る。
人の手によって摘まれ、蒸され、揉まれ、乾かされて、ようやく「お茶」になる。
🌿目次
- 🌄 チャノキとは ― 飲み物の前に「植物」がある
- 🍃 一年のめぐり ― 萌芽・葉・花・実
- 🌦 日本の土地と茶 ― 産地ごとの表情
- 🧪 茶になる植物の特徴 ― 香り・成分・常緑性
- 🏡 人との距離 ― 畑の木であり、生活の香りである
- 🌙 詩的一行
🌄 チャノキとは ― 飲み物の前に「植物」がある
お茶は飲み物だが、もとは山の湿り気をまとった常緑の木にすぎない。
チャノキはツバキの仲間で、光沢のある葉を持ち、冬も緑を落とさない。
気候や土壌の差で、葉の厚みや香りがわずかに変わる。
・原産は中国南部〜雲南周辺
・日本には奈良〜平安期に伝来したとされる
・現在は全国で栽培され、産地ごとの個性がある
「飲み物としてのお茶」を理解するには、まず植物としてのチャノキを知る必要がある。
🍃 一年のめぐり ― 萌芽・葉・花・実
チャノキは、四季に対してとても敏感だ。
・春:萌芽。最も柔らかく香り高い新芽が伸びる
・夏:成葉が厚くなり、光合成が盛んになる
・秋:白い花を咲かせ、実をつける
・冬:活動を抑え、翌春の芽を準備する
お茶の品質は、この季節のめぐりそのものだ。
🌦 日本の土地と茶 ― 産地ごとの表情
霧・傾斜地・火山灰土──。
日本の茶産地は、どこも独自の環境を持っている。
・静岡:温和な気候、広い茶園
・鹿児島:火山灰土と南国の光
・京都:霧の多い山里、玉露文化の根づく土地
・三重:山から海へと風が通り抜ける茶畑
土地の空気が、茶の香りをわずかに変えていく。
🧪 茶になる植物の特徴 ― 香り・成分・常緑性
チャノキの葉には、カテキン・テアニン・カフェインなど、お茶の香りや味を形づくる成分が豊富に含まれる。
常緑性によって、冬でも光合成を続け、じっくり蓄えを行う。
・日照・気温・湿度で成分比が変わる
・芽の柔らかさが香りの方向を決める
・発酵の有無で緑茶・烏龍茶・紅茶に分かれる
飲み物の種類を変えるのではなく、
葉の加工によってまったく別の香りが生まれる植物だ。
🏡 人との距離 ― 畑の木であり、生活の香りである
チャノキは、農地でありながら生活のすぐそばにある木だ。
朝の台所の湯気、湯呑の音、急須の香り──。
そのどれもが、この植物が長い時間をかけて育んだ香りだ。
「木の一年」と「人の一年」が重なる植物。
それがチャノキだ。
🌙 詩的一行
朝の光に濡れた一枚の葉から、今日のお茶の香りがゆっくり立ちのぼる。
コメント