水辺には、静かに積み重なった“跡”がある。
田んぼをつくった手の跡、川をならした時代の跡、
その中を巡ってきた生き物たちの気配。
トンボは、そのすべての上をそっと渡りながら、
今の景色を行き来している。
🕊️ 目次
📜 水辺に残る“人の跡” ― 川・田んぼ・暮らし
人は川を整え、田んぼを拓き、水路を張り巡らせてきた。
それらはどれも、暮らしを支えるための工夫であり、
同時に、生き物たちが入り込む余白も生んできた。
整いすぎた水辺では出会えない種も、
少しゆるやかな環境ではふっと姿を見せる。
人の手の跡が、トンボにとってのすみかになることも多かった。
🌿 自然が刻んできた変化 ― 雨・地形・季節
自然は、長い時間をかけて水辺を形づくってきた。
雨の多い年と少ない年、川が曲がる土地、
季節が巡るたびに変わる光と水量。
その変化のひとつひとつが、ヤゴの育つ場所を決め、
成虫の飛ぶ時間を変えていく。
水辺は常に動きながら、静けさと命を同時に抱えている。
🕊️ トンボが映す小さな歴史 ― 移りゆく景色の中で
トンボは、目立つ存在ではない。
けれど水辺が変わるたび、その姿も静かに変わっていく。
種類が増えたり、見かけなくなったり。
その動きが、水辺の“今”をそっと示してくれる。
長い年月の中で、人が残した景色と自然の働きが重なり、
その上を翅が渡り続けてきたという、ただそれだけの事実。
けれど、その事実には、水辺のすべてが含まれている。
🌙 詩的一行
残された水面の上を、翅の影が今日もそっとめぐっていく。
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