スルメイカ漁に休漁命令
― 「取りすぎ」と「不漁」が同時に起きる海(2025年11月)
鈴木農相は14日の会見で、小型船のスルメイカ漁が漁獲枠(TAC)を大きく超過したため、
現在の停止命令を解除できない状況だと明らかにした。
10月末時点での漁獲量は7,796トン。
今年度の漁獲枠5,757トン(11月10日時点)を2,039トン超過している。
■ 一見「取りすぎ」、しかし海では「不漁」が続いている
数字だけを見ると「取れすぎなのでは?」という印象を受ける。
しかし、実際の海ではスルメイカの資源量そのものは減少傾向にあり、
専門家からは「長期的には不漁」と指摘されている。
これは矛盾ではなく、次の2つが同時に起きているためだ。
① 資源量が少ない → だから漁獲枠は小さく設定される
② 少ない群れに船が集中 → 一気に枠を超過してしまう
海にいるイカは以前より少ないが、
その「少ない群れ」が沿岸にまとまって現れたとき、
漁船が一斉に向かった結果、枠だけが先に“満杯”になったかたちだ。
■ 今年、海で何が起きていたのか
2025年は、
・黒潮・対馬暖流の変動
・高水温による幼齢イカの生残低下
・産卵場の環境悪化
・来遊時期の乱れ
など、海の環境が静かに変わり続けた一年だった。
その影響はスルメイカだけでなく、
沿岸のさまざまな魚介類にも波のように広がっている。
■ 休漁の重さと、海のこれから
休漁は資源を守るために必要な措置だが、
漁師の暮らしにとっては厳しい決断である。
スルメイカは家庭の食卓でもよく見かける“身近な海の生き物”。
その姿が揺らぐとき、海の奥では何が起きているのか――。
今年の休漁は、その問いを私たちに静かに投げかけている。
🌊 せいかつ生き物図鑑・国内ニュース編
― 海の変化を見つめる観察記 ―出典:水産庁発表(2025年11月)/地方漁協聞き取り
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