森の落ち葉から見つかった新しいガ― 日本で未記録属「Ectropoceros」を初確認(2025年11月22日)

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森の落ち葉から見つかった新しいガ
― 日本で未記録属「Ectropoceros」を初確認(2025年11月22日)

日本の森で、これまで一度も記録されたことのないガの仲間が見つかった。
国際誌「Journal of Insect Biodiversity」に11月19日付で掲載された論文で、
Ectropoceros(エクトロポケロス属)というガの仲間が日本から初めて報告され、
あわせて新種として記載されたことが明らかにされた。

■ 日本で初めて見つかった“小さなガ”

Ectropoceros 属は、ヒロズコガ科(Tineidae)という小型のガの仲間に含まれる。
これまで東南アジアや太平洋地域などで知られてきたが、
温帯の日本やパレアール区では記録がなかった。

今回の研究では、日本で採集された標本を詳細に調べた結果、
既知のどの種とも一致しないことがわかり、
「Ectropoceros sagittalis(エクトロポケロス・サギタリス)」として新種記載が行われた。

■ 成虫・さなぎ・形の細かな違いまで観察

論文では、成虫の雌やさなぎの写真、
翅(はね)の模様や鱗粉のようす、
種を見分ける決め手となる生殖器のかたちなどが詳しく報告されている。

さらに、世界中で知られている Ectropoceros 属の既存種を整理し、
属全体のチェックリストも提示された。
小さなガ一種の発見でありながら、
このグループ全体の位置づけを見直すきっかけにもなっている。

■ 森の「腐葉土」に広がるすみか

ヒロズコガ科の多くは、落ち葉や枯れ木、菌類など、
森の中で分解されつつある有機物を利用して成長する。
今回の新種も、落ち葉が降り積もる林床やそのまわりの環境と深く関わっていると考えられている。

私たちが「ただの腐葉土」と見ている土の表面には、
目立たない小さなガたちの生活の場が広がっている。
その一角から、まだ名前も知られていなかった一種が掘り起こされた形だ。

森を歩くとき、足もとでカサカサと音を立てる落ち葉の下には、
こうした“未発見の住人たち”が静かに息をひそめているのかもしれない。

🌏 せいかつ生き物図鑑・国内ニュース編
― 足もとの自然を見つめる観察記 ―

出典:Journal of Insect Biodiversity Vol.72 No.1(2025年11月)

前回の記事→里の実りを守るために ― 「令和5年度 鳥獣被害の現状と対策(11月版)」公開

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