冬の香り ― みかんが実る場所で(2025年11月)

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手のひらの中に、太陽の記憶がある。
その名は、みかん。
冬の日本で最も身近な果実だ。
だが今年、その実りは少し静かだという。

農林水産省の発表によると、2025年の温州みかんの収穫量は
全国でおよそ55万9,600トン。
前年よりも18%少なく、近年で最も小さな数字となった。
原因は夏の高温と乾燥、そして局地的な豪雨。
樹々が実を落とし、甘みを守るために
自らの体を守った年だったと、農家は語る。

主な産地は和歌山・静岡・愛媛・熊本・佐賀。
この五県で全国の七割を占める。
斜面に並ぶ段々畑、海風が運ぶ潮の香り、
光を反射する果実の列。
みかん畑は、冬の海と山のあいだに広がる風景そのものだ。

収穫が減っても、味は決して負けていない。
日照が強かった分、甘みと香りが濃い。
小さな果実の中に凝縮された夏の記憶が、
いま、冬の食卓を照らす。

人はみかんを食べると、少し笑う。
指先に残る香りが、冬の部屋をやさしく包むからだ。
その温もりが、寒さの中の希望を教えてくれる。

🌏 せいかつ生き物図鑑・国内編
― 季節のいきものと暮らしをめぐる観察記 ―

出典:農林水産省統計/NHK地域報道/日本果実協会

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