🦗鈴虫12:静けさの中の声 ― 季節の記憶として

スズムシシリーズ

― 聴こえない音を聴く ―


🗂目次


🌌音の余韻

鈴虫の声が止んだあと、
夜は少し広くなる。

風の音が遠くで鳴り、
木々の影がゆっくり揺れる。

けれどその静けさの奥には、
まだ“音のかけら”が残っている。
耳を澄ますと、
どこかでかすかに「リーン」と響く気がする。

それはもう現実ではなく、
心の中の音。


🍂記憶の中の声

人は、季節を音で覚えている。
雨の音、鳥の声、
そして秋の鈴虫。

あの夜の涼しさや、
少し寂しい月の色までも、
声と一緒に思い出される。

音は、時間と心を結ぶ糸だ。
一度聴いた鈴虫の声は、
その人の中でいつまでも鳴り続ける。


🌙静寂の季節

冬のはじまりの夜、
外に出ると、もう何も鳴いていない。

それでも、
その静けさの中に秋の音が潜んでいる気がする。
風が少し揺れた瞬間、
過ぎ去った季節がよみがえる。

鈴虫はもういない。
けれど、音は消えていない。


💫受け継がれる響き

人から人へ、
耳から心へ、
音はかたちを変えて残っていく。

「昔、よく鳴いていたね」と語る声の中にも、
鈴虫の響きが生きている。

季節はめぐり、音は消え、
それでも記憶の中では鳴り続ける。

静けさの奥に、
今も鈴虫はいる。


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