― 音で季節を運ぶもの ―
🗂目次
分類:バッタ目 コオロギ科 スズムシ亜科
学名:Homoeogryllus japonicus
分布:本州・四国・九州
体長:オス約18mm/メス約20mm
鳴き声:「リーン、リーン」
食性:雑食(ナス・キュウリ・落葉など)
活動時期:7〜10月
生息環境:落葉樹林・草むら・石の隙間・民家周辺
特徴:透明な翅と細身の体。秋の夜に響く代表的な鳴く虫。
🍂秋の声
夕暮れの風が少し冷たくなったころ、
草むらの奥から小さな音が響く。
「リーン、リーン」
それは空気に溶けるように澄んでいて、
まるで季節そのものが鳴いているようだ。
スズムシの声は、
秋のはじまりを告げる鐘のように、
静かに、確かに、夜を染めていく。
🪶スズムシという名
名に「鈴」の字を持つ虫は、
ほかにいない。
古い人々はその音を“金属の鳴るような清音”と感じ、
まるで森に吊るした鈴が風に鳴るようだと思った。
鈴虫――
それは、耳で聴く風景の名だった。
🌾音の風景
スズムシは夜を選ぶ。
灯りの少ない場所で、翅を擦り合わせる。
その音はただの求愛ではなく、
空気を通して、森や人の心に響く“季節の声”。
夜ごとに数を増し、
やがて村全体がひとつの楽器のようになる。
秋の夜の静けさは、
その声によって形づくられている。
🌙季節の入口で
夏が終わり、風が乾く。
そのわずかな変化を、
スズムシは誰より早く感じ取る。
鳴き声が響くたび、
時間は少しずつ秋に傾いていく。
音の中に季節が宿る――
それが、この虫の生き方なのだ。
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