雨が降ると、森が静かになる。
葉にあたる音が遠くで重なり、
滴が幹を伝って地面へ落ちる。
森は、雨を吸いながら息をしている。
🌿 雨を受ける葉
シイやカシの葉は、水を弾く。
滑らかな表面を雨が走り、
枝を伝って幹に集まり、根へ流れこむ。
葉の形そのものが、水の道になっている。
強い雨でも葉が傷まないのは、
その厚みと弾力のため。
照葉樹の森は、
降る雨を“使いこなす”ようにできている。
💧 森の体をめぐる水
森に降った雨は、ただ流れ去るわけではない。
枝や苔がいったん抱え、
ゆっくりと滴にして落とす。
その時間のずれが、
森の湿りを保つ秘密。
地面に届いた水は、
根の網に吸い取られ、岩のすき間にたまる。
照葉樹の森は、まるごと一つの呼吸器なのだ。
🌾 雨上がりの匂い
雨がやむと、森は甘い匂いを放つ。
葉の表面についた微細な樹脂が湿気で香り、
土からは菌の匂いが立ち上がる。
その混ざりあった香りが、
南の森の空気をつくっている。
私たちが感じる「雨上がりの森の匂い」は、
森そのものの呼吸の音だ。
🌙 詩的一行
森は、雨を飲みながら生きている。
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