森の光は、一度に地面まで届かない。
枝がそれを受けとめ、
葉が分け合いながら、静かな陰をつくる。
🌿 層のある森
シイやカシの森を見上げると、
光は段になって降りてくる。
高い枝には若い葉、
その下に古い葉、さらに低木やシダが続く。
森全体が階層のように重なり、
どこにも“空白”がない。
枝は上へ伸びるだけでなく、横にも広がり、
互いのすき間を読むように形を変える。
それぞれの葉が光を分け合うことで、
森は立体のひとつの体になる。
🍃 陰が守るもの
照葉樹の森では、陰こそが命を守る。
強い日射と乾きをやわらげ、
下草や幼木を包む。
その陰の中で、芽は焦らず育つ。
森の奥は、まるで呼吸しているようだ。
風が抜けるたびに陰がゆれ、
光がその都度、新しい場所を探す。
陰は暗さではなく、生の余白なのだ。
🌾 枝の記憶
古い枝には苔がつき、
鳥や虫が巣をつくる。
折れた枝から芽が出ることもある。
枝はただの形ではなく、
森が積み重ねてきた時間そのもの。
人の目に見えるのは葉の表面だけれど、
森の構造を決めているのは枝だ。
見えないところで支え合う、
その構図が森の奥行きを生み出している。
🌙 詩的一行
陰は、森の光をやさしくする。
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