🦆潜水ガモ4:キンクロハジロ ― 黒金の冠をもつ潜水者|湖底に沈む光

潜水カモ

― 冬の湖、鏡のような水面に一瞬だけ金色が光る ―

風のない朝。 湖面の奥から、黒い影が浮かび上がる。 キンクロハジロ――黄金の瞳をもつ小さな潜水ガモ。 水面を滑り、波間に沈み、再び姿を現す。 その動きは、まるで光と水が語り合うようだ。


🌱 基礎情報 ― キンクロハジロという鳥

分類: カモ科ハジロ属(Aythya fuligula)
全長: 約42cm 翼開長: 約70cm
分布: ユーラシア北部で繁殖し、日本では冬鳥として全国に渡来。
特徴: オスは黒い体に白い脇、後頭部に長い冠羽をもつ。メスは全体的に褐色で冠羽が短い。
食性: 貝類・水生昆虫・甲殻類を潜って捕食。
鳴き声: オスは「ピュルル」、メスは低い「ガァー」。
識別ポイント: 冠羽、金色の目、白い脇腹のコントラスト。


🌾目次


🌱 湖に浮かぶ黒金の影

キンクロハジロは、冬の湖にひっそりと浮かぶ潜水ガモ。 名前は「金黒羽白(きんくろはじろ)」――金色の目と黒い羽に由来する。 寒気が深まる頃、北の大地から日本へと渡り、凍らない湖や池で冬を過ごす。

穏やかな水面に光が落ちるとき、彼らの瞳が真っ先にそれを捉える。 まるで水の記憶を映す鏡のように。


🌿 外見と見分け方 ― 黄金の瞳と冠羽

オスの黒と白のコントラストは、潜水ガモの中でも特に鮮やか。 後頭部の長い冠羽が特徴的で、風に揺れる姿は優雅そのもの。 目は濃い金色に輝き、遠くからでも印象的だ。

メスは地味な褐色で、目のまわりや嘴の基部に淡色が入る。 よく似たスズガモとは、冠羽と目の色で見分けられる。


🔥 潜水と採餌 ― 湖底の光を追う

キンクロハジロは潜水の名手。 10〜20秒ほど水中に潜り、湖底の貝や昆虫を嘴で掘り出す。 群れの一部が潜るあいだ、他の個体は周囲を警戒するなど、役割分担が見られる。

浮かび上がると、水滴が羽毛に散る。 その瞬間、黒い羽に光が宿る。まるで水と光がひとつになるようだ。


💧 群れと渡り ― 水の上の社会

冬になると群れをつくり、数十羽〜数百羽で行動する。 スズガモやホシハジロと混群をなすことも多い。 春には北へ渡り、ユーラシア北部の湖や湿地で繁殖する。

水面に広がる群れの形は、まるで風に描かれた模様。 その中心で、彼らは静かに季節の変わり目を感じ取っている。


🌊 観察地と出会いの季節

  • 🟢 東京都・井の頭池、千葉県・三番瀬 ― 都市で見られる冬の常連。
  • 🔵 滋賀県・琵琶湖 ― 日本最大の越冬地のひとつ。
  • ⚪ 北海道・風蓮湖 ― 群れの規模が大きく観察しやすい。

静かな朝、水面に浮かぶ黒と金の瞳。 その存在は、冬という季節の深呼吸のようだ。


🌙 詩的一行

湖に沈む光、それは冬の瞳が見た夢。


🫧→ 次の記事へ(ホシハジロ ― 茶の瞳、湖底の泳者)
🫧→ 潜水ガモシリーズ一覧へ

コメント

タイトルとURLをコピーしました