― 湖から湖へ、海から海へ ―
彼らの旅は、風と水がつくる見えない道をたどる。
潜水ガモの群れが空を渡るとき、 その軌跡は一本の水脈のように続いていく。 北の湖で生まれ、南の海で冬を越え、 春になればまた北へ―― その渡りは、何千年も続く“記憶の旅”だ。
🌾目次
🌱 渡りの起点 ― 北の湖から
潜水ガモたちの多くは、ユーラシア北部やシベリアの湖沼で繁殖する。 短い夏の間に子を育て、やがて秋風とともに南へ旅立つ。 ホシハジロ、スズガモ、ウミアイサ…… それぞれの群れが別々の空路を選びながら、 同じ目的――「凍らない水」を求めて移動する。
北の光と南の波が、彼らの一生をつなぐ軸となる。
🌿 渡りのルート ― 空と水の地図
潜水ガモたちの渡りは、湖と海を連ねる“水のルート”に沿って進む。 たとえばスズガモはオホーツク海から日本海沿岸へ、 ホシハジロはシベリアから琵琶湖や霞ヶ浦へ、 ウミアイサは北海道や本州の湾岸を南下していく。
彼らが選ぶルートは、食と安全と風の方向―― すべてを読む感覚の上に成り立っている。
🔥 群れの行動と社会性
潜水ガモは、採餌も渡りも群れで行う。 数羽から数千羽まで、その規模は種によって異なる。 湖面で一斉に潜る様子は、まるで呼吸を合わせたダンスのようだ。 群れの中には役割があり、警戒・採餌・飛翔のリズムが絶妙に保たれている。
この「社会的な潜水」は、冬を生き抜くための戦略でもある。
💧 渡りの季節 ― 風と光のタイミング
秋、北の風が吹き始めると渡りの合図が訪れる。 群れは風を背に受け、夜の空を進む。 昼は水面に降りて休み、夕暮れとともにまた飛ぶ。 その旅の終点は、日本の湖、河口、湾の静かな水面だ。
そして春、再び北へ。 渡りの道は、季節をめぐる生命の記憶そのものである。
🌙 詩的一行
風が変わるとき、空に見えない川が流れ始める。
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