海に還る希望のかたち(2025年10月28日)
世界の海を旅するアオウミガメ。
かつて「絶滅危惧種」として名を連ねたその生き物が、
半世紀の時を経て、ようやく一歩海へ戻った。
国際自然保護連合(IUCN)はこの10月、
アオウミガメの保全状態を「絶滅危惧」から
「低危険種(Least Concern)」へと変更したと発表した。
1970年代以降、各国での捕獲禁止、産卵地保護、
海洋プラスチック削減の取り組みが続き、
世界的に個体数はおよそ28%増加したという。
しかし、この数字は「回復」ではなく「回帰」だ。
人が奪った場所に、
再び命が帰ってきただけのこと。
浜辺に残る足跡の数はまだ少なく、
その下の砂の温度が高くなりすぎる日もある。
気候変動が進むにつれて、
孵化する子ガメの性比が偏るという報告もある。
それでも海は、
少しずつその静けさを取り戻しつつある。
砂を押しのける小さな鳴き声、
光に向かって進む稚ガメたち。
人が守ったのではなく、
海が許した結果として、
この再会が訪れたのかもしれない。
アオウミガメは長い旅をする。
何千キロもの海を越え、
生まれた浜へと帰ってくる。
その旅の途中、
彼らが見ているのは「未来」そのものだ。
人と自然がどんな約束を交わすか、
それが彼らの帰る場所を決めるのだろう。
🌏 せいかつ生き物図鑑・世界編
― 海を渡る命を見つめる観察記 ―🌎前回の記事→揺れる緑 ― コロンビアの森が削られる
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