ジャワサイ移送後に死亡― 絶滅寸前の生き物を守る試みのむずかしさ(2025年11月)

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インドネシアで暮らしていたジャワサイのオス「Musofa(ムソファ)」が、
遺伝的多様性を高めるための移送直後に死亡したと発表された。
世界に50~75頭しか残っていないとされる希少種で、その1頭の死は大きな衝撃を与えている。

■ ジャワサイとはどんな動物か

ジャワサイ(Rhinoceros sondaicus)は、
インドネシアのジャワ島などにかつて広く生息していたサイの仲間。
体の大きさは2〜2.5mほどで、現在は主にウジュンクロン国立公園にのみ残る。

人との軋轢や過去の乱獲、森の減少によって数を急速に減らし、
現在は世界でもっとも絶滅に近い大型哺乳類のひとつとされる。

■ なぜ移送が行われたのか

ジャワサイの野生個体は、ほとんどが1か所(ウジュンクロン)に集中している。
この状態が続くと、

近親交配による遺伝的な弱体化
・火山噴火や病気など、一度の災害で集団が壊滅するリスク
といった問題が大きくなる。

そのため保全計画では、「第2の生息地」をつくるために、
何頭かを別の保護区へ慎重に移送するプロジェクトが進められていた。

■ 45歳のオス「Musofa」に何が起きたのか

移送されたのは、45歳という高齢のオスの個体。
慎重に運ばれたものの、移送からまもなく死亡が確認された。
死因は調査中だが、ストレス、体力の低下、環境の急変などが影響した可能性がある。

大型哺乳類の移送は、どれだけ準備しても一定のリスクを伴う。
特に個体数の少ない種では、1頭の損失が個体群全体に重くのしかかる。

■ “守るための行動”のむずかしさ

自然保護の現場では、時に「守るための行動」が別の結果を招くことがある。
しかし、それでも行動を止めれば、種は静かに数を減らしていく。

ムソファの死は悲しい出来事だが、
同時に、ジャワサイを未来へつなぐために必要な取り組み――
生息地の分散、遺伝的多様性の確保、より安全な移送技術――を問い直すきっかけにもなっている。

森の奥で静かに生きてきた1頭のサイの往路が、
これからの保全の姿勢に小さな光を投げかけている。

🌍 せいかつ生き物図鑑・世界編
― 変わりゆく地球を見つめる観察記 ―

出典:インドネシア環境林業省発表/国際保全団体報告(2025年11月)

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