― 京と若狭を結ぶ道 ―
海の香りを運んでくる街道があった。
若狭の港で塩を打たれたサバは、峠を越え、都へと向かう。
その命が寿司という形に生まれ変わるとき、
海と山、そして人の心がひとつに結ばれる。
🌾目次
🗾 若狭と京都 ― 鯖街道の記憶
若狭湾で水揚げされたサバは、塩でしめられ、山を越えて京都へ運ばれた。
その道は「鯖街道」と呼ばれ、海の恵みを都に届ける命の道。
早朝に出発した荷は翌朝には京の市場へ。
その新鮮さこそ、京の人々にとって海を感じる唯一の方法だった。
🍣 鯖寿司の成り立ち ― 保存から文化へ
鯖寿司の起源は、塩サバを飯で包み、発酵させて保存する方法にあった。
やがて京に伝わると、味わいは洗練され、
酢でしめたサバに甘酢飯を合わせる“ハレの日の食”となった。
それは、旅と祈りの記憶を形にした料理だった。
🎎 美意識 ― 都に受け継がれた味
京の鯖寿司は、単なる保存食ではない。
押しの加減、酢の香り、笹の包み――そのすべてに美がある。
人は味の中に季節と土地を見出し、
海と都のあいだに生きる時間を感じてきた。
🌙 詩的一行
山を越えて届く海の味、それが都の記憶になった。
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