背の低い草が続く場所では、姿よりも先に痕跡が現れる。草の根元に細い道が走り、地表の下に空洞が続く。ハタネズミ類は、目立たない動線を張り巡らせながら、広い土地を使って生きている。
ハタネズミ類は、森林よりも開けた環境を選ぶネズミたちだ。農地、草原、河川敷、雪原。隠れる場所が少ない環境で、彼らは集団・通路・地下を組み合わせることで身を守ってきた。
◆ 基礎情報
- 分類:哺乳綱/齧歯目/キヌゲネズミ科(ハタネズミ亜科)
- 和名:ハタネズミ類
- 英名:Voles
- 学名:Microtus 属 ほか
- 分布:北半球を中心に広く分布
- 主な環境:草原/農地/河川敷/寒冷地
- 体長:約8〜15cm(尾を除く)
- 体重:約20〜80g
- 食性:草食寄り(草・根・茎・種子)
- 活動:昼夜を問わず断続的に活動
- 繁殖:繁殖期に高頻度で出産
- 寿命:野生で1年程度が多い
- 天敵:猛禽類/キツネ/イタチ類など
- 特徴:短い尾と丸い体、地下通路の利用
🎐目次
🌿 1. ハタネズミ類とは ― 草地に特化したネズミ
ハタネズミ類は、森林を離れ、草原という開けた環境に適応したネズミだ。高く登ることも、深く潜ることもせず、地表近くを水平に使う。
- 行動:地表・地下浅層を往復。
- 移動:草の根元に通路を作る。
- 巣:地下の簡易な巣穴。
視界が開けている分、危険も多い。そのため彼らは「速く逃げる」より「見つからない構造」を作る。
🦴 2. 体と形 ― 走らず、隠れる体
ハタネズミ類の体は丸く、尾は短い。跳躍や登攀には向かないが、草の間をすり抜けるには適している。
- 体形:ずんぐりしている。
- 尾:短く、露出が少ない。
- 動き:直線的で素早い。
この体は、見通しの悪い草地でこそ力を発揮する。
🌾 3. 暮らす環境 ― 草原・農地・雪の下
ハタネズミ類は、季節によって生活の重心を変える。
- 夏:草原・農地で活動。
- 冬:雪の下に通路を作る。
- 寒冷地:地表下で植物を利用。
特に雪の下の生活は特徴的だ。外敵から守られた空間で、彼らは活動を続ける。
🔎 4. 人との関係 ― 農地と個体数変動
ハタネズミ類は、個体数の増減が激しいことで知られる。
- 被害:作物や牧草の食害。
- 増減:数年周期で大発生することも。
- 管理:農地環境と密接に関係。
増えすぎると問題になるが、減りすぎれば捕食者も困る。ハタネズミ類は、草原生態系の揺れを映す存在だ。
🌙 詩的一行
草の根を走る細い道が、広い大地の裏側を支えている。
🎐→ 次の記事へ(ネズミ10:トビネズミ)
🎐→ ネズミシリーズ一覧へ
コメント