春のはじまりは、花よりも先に、木の内部で起こる。
地温が上がり、日照が伸び、枝の先で準備が進む。
モミジの春は、静かだ。
桜のように一斉に目を引くことはない。
けれど、芽がふくらみ、若葉が開く過程には、確かな季節の移行が刻まれている。
春のモミジは、次の秋のために生きている。
葉を広げ、光を受け、内部を整える時間だ。
この章では、
芽吹きから若葉が揃うまでの春のモミジを見ていく。
🍁 目次
🌱 1. 芽吹き ― 冬から春への切り替え
冬のあいだ、モミジの芽は固く閉じられている。
内部には、葉や花の原基がすでに形成され、低温の中で待機している。
- 条件:気温の上昇と日照時間の増加
- 反応:休眠の解除
- 結果:芽鱗が開き、成長開始
芽吹きは一斉ではない。
枝の位置や日当たりによって、数日から一週間ほど差が出る。
このばらつきが、
春の樹冠に奥行きを与える。
🍃 2. 若葉の色 ― 赤みを帯びる理由
モミジの若葉は、明るい緑ではなく、
赤みや銅色を帯びて展開することが多い。
- 色:赤褐色〜淡紅色
- 要因:アントシアニンの一時的な生成
- 役割:強光や低温からの保護
この赤みは恒常的なものではない。
葉が成熟するにつれて、緑へと移行していく。
春の赤は、
弱い若葉を守るための色だ。
🌤 3. 春の光と葉 ― 展開の速度
葉の展開速度は、春の気候に大きく左右される。
暖かく穏やかな年は、葉が揃うまでの時間が短い。
- 気温:高いほど展開が早い
- 日照:安定すると葉が均一に開く
- 霜:遅霜は若葉に影響を与える
急激な展開は、霜害や乾燥のリスクも伴う。
モミジは、気候の揺れを受けながら、無理のない速度で葉を広げる。
🧬 4. 花と同時進行 ― 目立たない開花
モミジは、葉の展開とほぼ同時に花を咲かせる。
ただし、花は小さく、目立たない。
- 花:淡黄緑色の小花
- 受粉:風・昆虫の併用
- 位置:新葉の付け根付近
花は、春の主役ではない。
確実に受粉し、実を結ぶための最低限の構造だけを持つ。
モミジの春は、
装飾よりも準備を優先する季節だ。
🍁 詩的一行
モミジの春は、静かに整えられ、秋へと続いていく。
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