【分類】ハチ目(膜翅目)ハナバチ科 ミツバチ属(トウヨウミツバチ)
【学名】Apis cerana(アピス・セラナ)
【体長】働き蜂:10〜12mm/女王蜂:17〜19mm/雄蜂:14〜16mm
【群勢】1〜2万匹(小〜中規模)
【行動半径】約1〜2km
【寿命】働き蜂:夏30日前後/冬は数か月
【分布】アジア広域(中国・韓国・台湾・東南アジア・南アジアなど)
【巣の特徴】自然の隙間を利用し、縦方向に巣板を重ねる/人工巣箱にも定着するが慎重
【食性】花の蜜・花粉(在来植物への適応が高い)
【季節】春〜夏に増勢し、秋に蜜を蓄え、冬は縮小して越冬
【性質】慎重・逃去性あり/外敵に対し熱殺蜂球で防御
【病害】ノゼマ病などに比較的強いが、環境変化に敏感
【人との関わり】アジアの伝統養蜂の主役/天然蜜(百花蜜)は貴重
― アジアの森と町を渡り歩き、人と長く暮らしてきた在来のミツバチ ―
トウヨウミツバチ(Apis cerana)は、アジア一帯を広く分布する在来のミツバチだ。
ニホンミツバチの「本家」にあたる存在で、気候や植物の違う地域ごとに多様な系統が見られる。
慎重な性質で逃去しやすいが、環境への適応力と外敵への強い防御行動を持つ。
🐝目次
- 🌏 トウヨウミツバチとは ― アジアに広がる在来種
- 🧭 性質と社会性 ― 慎重で柔軟な暮らし方
- 🏡 巣づくりと環境 ― 自然の隙間を生かす巣
- 🌼 花との関係 ― 在来植物に強い適応力
- 🔄 ニホン・セイヨウとの違い ― 行動・蜜・防御
- 🍯 アジアの蜂蜜文化 ― 地域ごとに変わる味わい
- 🌙 詩的一行
🌏 トウヨウミツバチとは ― アジアに広がる在来種
アジア圏で最も広範囲に見られるミツバチが、このトウヨウミツバチだ。
温帯〜熱帯まで分布し、標高の高い地域や乾燥地帯にも適応する。
・日本のニホンミツバチはこの亜種
・中国・韓国・タイ・ベトナムなどにも各地域系統が存在
・環境の違いに応じて小さな差異が生まれている
アジアの伝統養蜂文化は、この蜂とともに築かれてきた。
🧭 性質と社会性 ― 慎重で柔軟な暮らし方
性質は非常に慎重で、巣体験の悪化・振動・匂いの変化などに敏感だ。
そのため逃去性(巣を放棄して移動する行動)が強い。
・外敵には「熱殺蜂球」で対応できる
・気候変動や食料不足にも柔軟に対応
・個体はセイヨウミツバチより敏捷で素早い
特に東南アジアでは、森林の環境変化に合わせて群れが移動し、季節的に人里へ現れることも多い。
🏡 巣づくりと環境 ― 自然の隙間を生かす巣
巣は縦方向に長い板状の巣板をいくつも並べる形で、
樹洞・岩の割れ目・建物の隙間など、雨風を避けられる場所を好む。
・巣箱には定着するが、慎重で時間がかかる
・外敵の多い地域では巣の場所選びが生存の鍵
・巣の規模はセイヨウミツバチより小さめ
人工巣箱を使う伝統養蜂では、丸太をくり抜いた巣箱や竹の筒が各地で利用されてきた。
🌼 花との関係 ― 在来植物に強い適応力
アジアは植物の種類が非常に多く、
トウヨウミツバチはその多様さに適応した訪花の柔軟性を持つ。
・細い花・筒状の花にも入りやすい
・在来の植物と特に相性がよい
・季節や地域によって訪花パターンが変化
この柔軟性が、アジア各地の農業と自然林を支えてきた。
🔄 ニホン・セイヨウとの違い ― 行動・蜜・防御
トウヨウミツバチは、ニホンミツバチと共通点が多いが、
広い視点では3者比較がわかりやすい。
・群勢
セイヨウ:大規模(3〜5万匹)
トウヨウ:中規模(1〜2万匹)
ニホン:小〜中規模(地域差あり)
・定着性
セイヨウ:巣箱に安定して住む
トウヨウ:慎重で逃去も多い
ニホン:逃去性が強い(最も敏感)
・防御行動
トウヨウ/ニホン:熱殺蜂球が得意
セイヨウ:蜂球はできるが精度は低め
・蜜の性質
セイヨウ:量が多く商業向け
トウヨウ:百花蜜が主体で香りが強い
ニホン:より濃厚で希少
アジアの環境に適応し続けた結果、
トウヨウミツバチ独自の「柔らかい社会性」が形成されている。
🍯 アジアの蜂蜜文化 ― 地域ごとに変わる味わい
アジアの伝統養蜂では、トウヨウミツバチの蜜は
「百花蜜」として珍重されてきた。
・季節ごとに花の組成が変わり、味や香りも変化
・地域の森林と農村文化を象徴する食品
・自然巣から採取される蜜は特に香りが濃い
タイ・ベトナム・中国各地では、
丸太巣箱や竹巣箱を用いた伝統養蜂が今も残り、
土地の植物の香りをそのまま閉じ込めた蜜が採れる。
🌙 詩的一行
森と町のあいだをすり抜ける小さな羽音が、アジアの季節をそっとつないでいく。
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