― 冬を越えて、酸がやわらぐ ―
| 分類 | ミカン科ミカン属(Citrus natsudaidai) |
| 和名 | 甘夏(アマナツ)/夏ミカン(ナツダイダイ)変異種 |
| 英名 | Amanatsu orange / Natsumikan |
| 分布 | 日本(主に九州・山口・愛媛)/原産:山口県長門地方の実生変異 |
| 樹高 | 3〜5m(常緑小高木) |
| 果実径 | 8〜10cm |
| 旬 | 4月〜6月(貯蔵後出荷) |
| 特徴 | 厚い果皮とほどよい酸味。冬に収穫し、春以降に酸が抜けて甘くなる。 |
| 主産地 | 熊本県・大分県・愛媛県・山口県 |
| 食用部位 | 果肉(生食・マーマレード・ゼリー) |
| 文化的利用 | 春から初夏の季節果。贈答・加工品に利用。 |
🍊目次
🌿 起源と変異 ― 夏ミカンから生まれた果実
甘夏は、山口県長門市で栽培されていた夏ミカンの枝変わりとして発見された。 もとの夏ミカンよりも酸味がやわらかく、果汁が多かったため、 「甘夏」として分離・栽培された。 戦後には九州各地へ広まり、春から初夏の果物として定着。 貯蔵性が高く、冬の収穫を経て酸が抜けてから出荷される。
🍊 果実の特徴 ― 厚い皮と貯蔵の酸抜け
果皮は厚く、黄色が強い。 冬に収穫した直後は酸味が強いが、 貯蔵中にクエン酸が減り、4月頃から食べやすくなる。 果肉はしっかりしていて、噛むと爽やかな苦みがわずかに残る。 糖度は約11度、酸度は0.8〜1.0%。 保存によって味が変化する点が、甘夏の最大の特徴である。
🌎 栽培環境 ― 冬を越える木の力
甘夏は寒さに比較的強く、冬を越えても果実を木につけたままにできる。 その間に果皮が厚くなり、内部の水分と酸が変化していく。 温暖な気候と適度な寒暖差が、 酸味と甘味の均衡を整える。 農家は貯蔵室の湿度を保ち、風通しを良くすることで、 果実の乾燥を防ぎながら酸抜けを待つ。
🥢 味わいと季節 ― 初夏に食べる冬の名残
口にふくむと、酸がやわらぎながらも、 八朔のような軽い苦みが後味に残る。 果汁が多く、冷やして食べると清涼感が際立つ。 冬に実り、春に味を整え、初夏に食べる。 その時間のずれが、ほかの柑橘にはない味わいをつくる。 甘夏は「季節の余韻を食べる果実」といえる。
✒️ 詩的一行
酸が抜けるあいだに、季節が変わっていく。
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