🍊ミカン6：伊予柑 ― 果汁と酸味の調和 ―

― 果汁がひと口にあふれる果実 ―

分類	ミカン科ミカン属（Citrus × iyo）
和名	伊予柑（イヨカン）
英名	Iyo orange
分布	日本（主に愛媛県）／原産：日本国内の自然交雑種
樹高	3〜4m（常緑小高木）
果実径	8〜10cm
旬	1月〜3月
特徴	果汁豊富で香りがよく、酸味と甘味の調和がある。皮はやや厚く手でむける。
主産地	愛媛県・熊本県・山口県など
食用部位	果肉（生食・ジュース・マーマレード）
文化的利用	愛媛県の代表果実として県花・県木に指定

🍊目次

伊予柑は、日本国内で自然交雑によって生まれた柑橘。明治時代に山口県萩市で発見され、のちに愛媛県で広く栽培された。愛媛の旧国名「伊予」にちなみ、その名がつけられた。果汁が多く香りがよいことから人気が高まり、現在では愛媛県を代表する果実となっている。

果皮はやや厚く、色は明るい橙色。果肉はやわらかく、果汁が非常に多い。糖度は11〜12度、酸度は約1.0%で、甘さよりもすっきりした後味が残る。香気成分リモネンとリナロールの組み合わせが爽やかで華やかな香りを生む。食べた瞬間に果汁が弾け、口の中に香りが広がる。

伊予柑は日当たりのよい斜面地で育つ。愛媛県の段畑は、石垣で風をやわらげ、日光を均一に受けるための工夫が重ねられてきた。温暖で雨の少ない瀬戸内気候が、果実の酸味と甘味の調和を保つ。霜を避け、枝の剪定や摘果で果実の品質を高める栽培が続く。

伊予柑は、果汁を味わう果実といわれる。果肉をかむと細かな房がほぐれ、酸味の中にやわらかな甘みが重なる。そのみずみずしさは、冬の果実の中でも際立つ。生食のほか、果汁を搾ってジュースやマーマレードにも使われる。香りと酸味の調和が、人の記憶に残る果実である。

ひと口の果汁に、冬の海の静けさがある。