🍊ミカン20：人と自然 ― 暮らしに残る季節 ―

― 果実をめぐる暮らしは、季節そのものだった ―

🍊目次

ミカンを見つめることは、季節を見つめることだった。木の色、風の匂い、皮をむいたときの音。小さな変化の中に、自然の時間が流れている。観察は特別なことではなく、暮らしの中で息をするように行われてきた。それがこの果実の歴史を支えている。

冬のこたつ、台所の籠、畑の木。どの風景にも、ミカンはそっと在った。それは“食べるため”だけでなく、人の暮らしに色を添える存在だった。果実は、季節を人の手に渡す媒介。自然が身近にあることを、人はこの小さな果物から学んできた。

機械化され、果実の流通も効率化された。けれども、収穫の手や家庭の味は今も残る。新しい時代になっても、果実を分け合う光景は消えていない。自然の恵みを感じ取る力は、人が生きる感覚のひとつとして続いていく。それは、季節とともに暮らすということの証だ。

果実をめぐる時間が、今も人の暮らしを照らしている。