🍊ミカン10:清見オレンジ ― 交配のはじまり ―

ミカンシリーズ

― 甘夏と温州のあいだに生まれた果実 ―

分類ミカン科ミカン属(Citrus unshiu × C. nobilis
和名清見(キヨミ)オレンジ
英名Kiyomi tangor
分布日本(全国各地で栽培)/原産:静岡県農試での人工交配(1949年)
樹高2〜3m(常緑小高木)
果実径7〜8cm
2月〜4月
特徴温州ミカンの甘さと、トロビタオレンジ(外来種)の香りを併せもつ。多汁で香気が高い。
主産地愛媛県・和歌山県・静岡県
食用部位果肉(生食・ジュース・交配親)
文化的利用多くの新品種(不知火、はるみなど)の母系親となる。

🍊目次


🌿 誕生と背景 ― 人の手が生んだ品種

清見は、1949年に静岡県で温州ミカンとトロビタオレンジを交配して誕生した。 日本初の“人工交配による柑橘”として知られる。 目的は、温州の食べやすさと外来オレンジの香りを両立させること。 1955年以降、全国の試験場で増殖され、 のちの多くの新品種の親として使われることになる。


🍊 果実の特徴 ― 香りと甘みの中間点

果皮はやや厚く、橙色。果汁が多く、香りは華やか。 糖度は12〜13度で、酸度は約1.0%前後。 温州の柔らかさをもちながら、 オレンジ系の明るい香りと軽い酸味を感じる。 袋がやや厚いため、スプーンで食べるのに向く。 まろやかで透明感のある味が、次世代交配の基準となった。


🌎 栽培と広がり ― 交配の母として

清見は果汁が多く糖酸比が安定しているため、 新品種育成の親として使いやすい特性をもつ。 不知火(デコポン)やはるみ、天草など、 現在の高級柑橘の多くが清見系統から生まれた。 栽培地は温暖で乾燥気味の地域が多く、 果実は樹上でじっくり完熟させるのが特徴。 その安定した品質が“交配の基準”となっている。


🥢 味わいと意義 ― 新しい柑橘の原点

清見の味は、強い個性よりも調和にある。 酸味・甘味・香りのバランスがよく、 どの方向にも発展できる“基盤の味”。 自然の偶然ではなく、人の設計によってつくられた果実が、 のちの多様な柑橘文化を支える基礎となった。 その静かな存在感が、現代のミカンの始点である。


✒️ 詩的一行

調和の中に、新しい果実の未来がひらく。


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