― 冬の食卓にのる最も身近な果物 ―
ミカンはミカン科ミカン属の常緑果樹。 代表種は温州ミカン(Citrus unshiu)。 原産は中国南部から東南アジアとされ、 日本では江戸時代に紀伊・長門を中心に広まった。 いまでは全国の温暖な沿岸部で栽培され、 冬の果物の代表として親しまれている。
🍊目次
🌿 形と構造 ― 常緑樹の姿
ミカンの木は高さ2〜3メートルほど。 枝は密に分かれ、葉は光沢のある楕円形で先がとがる。 春に白い五弁花を咲かせ、秋から冬に実をつける。 果実は外果皮・中果皮・内果皮の三層構造。 皮の表面には精油を含む油胞が点在し、 つぶすと独特の香りが立つ。 果肉は多数の小房に分かれ、 房の中の袋(じょうのう膜)が果汁を包む。
🌎 生育環境 ― 海と傾斜の土地
ミカンは日当たりと水はけのよい土地を好む。 平均気温15℃前後、冬でも氷点下になりにくい地域が適地。 日本では愛媛・和歌山・静岡など、 南向きの段畑や海沿いの斜面で多く栽培されている。 潮風が霜を防ぎ、温度差がやわらぐことで、 果実の甘みと酸味のバランスが保たれる。
🥢 味と栄養 ― 甘みと酸味の平衡
ミカンの果肉には水分が多く、 糖分(ショ糖・ブドウ糖・果糖)とクエン酸が主要成分。 糖酸比は10〜14程度が一般的で、 この比率が味の印象を決める。 ビタミンCは1個あたり約30mg。 冬の体調維持や食後の口直しに向く果物として、 古くから食卓に定着している。
🧺 暮らしの中のミカン ― 冬の常備果
皮をむくだけで食べられ、保存性が高い。 箱で買い、冷暗所に置いて少しずつ食べる習慣は、 戦後の流通発達とともに広まった。 今でも冬の台所やこたつの上に置かれる定番の果物。 一つの果実に、季節の気配と生活の温度が重なっている。
✒️ 詩的一行
冬の机に転がる一つの実が、暮らしの明かりになる。
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