🐟マグロ9：コシナガ

― 小型種の静かな海 ―

コシナガマグロ（小品鮪） ― マグロ類の中でも小型で温暖な外洋をめぐる種。体はずんぐりとしながらも敏捷で、群れを成して海の表層を旅する“静かな回遊者”。

分類	スズキ目サバ科マグロ属（Thunnus tonggol）
英名	Longtail tuna（ロングテールツナ）
分布	インド洋〜西太平洋の沿岸域に広く分布。日本では九州南部〜沖縄近海。
体長	最大約1.3m（一般的には80cm前後）
体重	最大30kg前後
寿命	推定8〜10年
食性	小魚・甲殻類・イカ類などを捕食する肉食魚。
生息環境	主に沿岸の表層〜中層を回遊。外洋よりも温暖で浅い海を好む。
漁法	巻網・延縄・定置網。地域漁業で重要な資源。
保全状況	IUCNレッドリスト：Least Concern（低懸念）だが、地域的に資源変動がある。

大海を走るマグロたちの中で、
もっとも沿岸に近い海を泳ぐ小さな影。
それがコシナガ。
外洋を渡るクロマグロとは対照的に、
浅く温かな海で生きる“静かな旅人”である。

コシナガの名は“長い尾”を意味する。
尾柄部が細く長く、上下に延びたヒレ突起が特徴。
体色は背が濃い群青、腹が銀白で、
光の角度で青と銀が溶け合う。
胸びれはやや短めで、全体として軽量で俊敏な体型をしている。

外洋を渡らず、島嶼や大陸棚沿いを回遊する沿岸性マグロ。
水温25〜30℃の暖海を好み、潮流の変化に合わせて南北に移動する。
夜はやや深い層に沈み、昼間は光を追って中層を泳ぐ。
月明かりの強い夜には海面近くで群れる姿が見られる。

イワシやカタクチイワシなどの小魚、
甲殻類・イカ類を主に捕食。
中層の小群を追い、素早く泳ぎながら捕らえる。
コシナガの動きは繊細で、海中の光の変化に敏感。
まるで“光そのものを食べる魚”のようだ。

漁法は巻網・延縄・定置網など。
地域によっては一本釣りも行われる。
脂が少なく淡い赤身の肉質で、
焼き魚や干物、刺身、缶詰などに加工される。
日本では主に南方の沿岸漁業で重要な魚種となっている。

潮の音の中で、ただひとすじに光を追う。