🐟マグロ11:マグロ漁業の現場

マグロシリーズ

― 大海の仕事 ―

暗い海に甲板灯がともる。
エンジンの低い唸り、風の匂い、濡れたロープ。
海図に線を引くのは、人の経験と魚の記憶。
マグロ漁は、海の変化を読み続ける“観察の仕事”だ。


🌾目次


🌱 延縄(はえなわ) ― 広い海に点を打つ

延縄は、数十〜数百キロに伸びる幹縄に、
等間隔で枝縄と針を配していく方法。
海面や中層の決めた深さに餌を漂わせ、
マグロの回遊線上に“点”を置くように狙う。
投入(なげこみ)と揚縄(あげなわ)のリズム、
餌の鮮度、潮と風の角度――細部が釣果を左右する。


🌿 巻網と定置 ― 群れの動きを面で捉える

巻網は、魚群の外側から大きな網で囲い、
底を締めて群れごと獲る漁法。
魚探や目視に加え、鳥や表層のきらめきから
群れの密度と移動方向を読む。
定置網は、潮の“道”に網を据え、
回遊する群れを、日々の海況で迎え入れる。
どちらも“海の流れを面として把握する”仕事だ。


🔥 一本釣り・トローリング ― 速さと技術の漁

一本釣りは、誘い・食わせ・取り込みまでが一呼吸。
疑似餌や撒き餌で活性を上げ、
魚との距離を縮めてから素早く引き抜く。
トローリングは、曳航する疑似餌で
表層を走るマグロの反射を誘う方法。
速度・舵角・波の立ち方――船が“道具”になる。


🌊 船上の一日 ― 気象・海況・操業のリズム

出港前の点検に始まり、投縄、見張り、揚縄、処理。
夜明けとともに気象図を確認し、
風向と波長、うねりの位相を重ねて操船する。
取り込んだ魚は血抜き・冷却で鮮度を保ち、
箱詰めと温度管理で“海の時間”を止める。
船の上では、分単位の判断が続いている。


⚓ 受け継がれる知恵 ― 海を読む技

群れの手前に立つ鳥、潮目に浮く藻、
風の層が変わる瞬間の匂い――
先人は小さな違和感を積み重ねて海を学んだ。
最新機器があっても、最後に決めるのは身体感覚だ。
技術は進んでも、観察と記憶の漁は変わらない。


🌙 詩的一行

海を測るのは道具ではない、じっと見つめる人の目だ。


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