― 共に生きるという問い ―
🗂目次
分類:哺乳綱 クマ科
分布:日本(北海道・本州・四国)
主題:環境変化・気候・共存の模索
象徴:再生・選択・祈り・未来
関連語:気候変動, 生息地, 餌不足, 共存, 里山再生
🌲森の飢え
山の奥で、木の実が減っている。
ドングリの結実が不安定になり、
クルミやナラの実も、年ごとにばらつく。
夏の長雨、秋の乾き、
小さな変化が重なって、
森は静かに“飢え”を広げていく。
熊はその兆しを、誰よりも早く感じ取る。
腹をすかせた母熊は、子を連れて谷を下り、
川を越え、人の畑の匂いを嗅ぐ。
それは侵略ではなく、
森の飢えが、町に届いた音だった。
🌾人の暮らしの光と影
山のふもとには、
柿の木、栗の木、果樹園。
人が育てた実りが、熊にとって最後の食卓になる。
けれど、人の暮らしもまた限界の上にある。
過疎の村、放置された畑、管理されない山林。
人のいない土地が増え、
森は“人の手を忘れた森”になっていった。
熊が山を下りたのではない。
人が山から離れたのだ。
🕊距離を取り戻すために
もう、元の世界には戻れない。
熊を恐れ、追い払い続けるだけでは、
この関係は終わらない。
大切なのは、
再び「距離をつくる」こと。
山を管理し、実りを戻し、
人と熊が棲み分けられる空間を保つこと。
それは古いようで、
新しい共存の形。
熊の通り道を知ること。
森を観察し、手入れすること。
それが、恐れではなく“理解”を生む。
🌅これからの熊たち
森の向こうに、
光が落ちている。
その中を、一頭の熊が歩いていく。
遠くで人の声が聞こえる。
もう敵ではない、
ただ同じ土地に生きる者の声として。
熊が山を下り、
人が森へ目を向ける。
そのあいだに生まれる静けさこそ、
これからの共存のはじまりかもしれない。
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