― 生活の中の木 ―
家の柱も、囲炉裏の薪も、
どこかで育った木の一部だ。
木と人は、長い時間をかけて互いを形づくってきた。
🪵 木のある暮らし
日本の家は、もともと森の延長にあった。
山で伐ったコナラやクヌギは、
梁や柱となり、床を支え、
冬には薪として燃え、灰となって土へ還った。
木は使い捨てではなく、循環の中にあった。
古い家の柱には、炭のように黒ずんだ木目があり、
それは百年を超える時間の記録でもある。
🌳 森と家の距離
かつて、家を建てるということは森と対話することだった。
どの木を伐るか、どの太さを使うか、
木の癖や重さ、乾き方を見極める。
家は森の延長線上にあり、
人は木を通して季節と関わっていた。
いまの住宅では、木の姿が見えにくくなった。
けれど家具や床の下には、
いまも森の記憶が息づいている。
🌾 木のぬくもり
木の香りには、人の心を落ち着かせる成分がある。
手で触れたときの温度、
呼吸するように湿気を吸ったり吐いたりする性質。
それらすべてが、生きていた証だ。
森を離れても、
木は人の暮らしの中で静かに生き続けている。
🌙 詩的一行
木のぬくもりは、森の記憶の手ざわり。
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