― 静けさを守る樹々 ―
村のはずれ、石段を上ると、空気が変わる。
音が吸い込まれ、風がゆっくりと動く。
神社の森は、人と森の境界にある静かな世界だ。
🌿 杜という森
日本各地の神社には「鎮守の森」と呼ばれる小さな森がある。
その多くをつくっているのが、コナラやアラカシ、シラカシなどの木々。
常緑と落葉が入り混じり、
季節ごとに色も音も変えていく。
鳥が巣をつくり、虫が土を動かし、
そこには祈りと生態が重なっている。
人が木を植え、
木が静けさをつくり、
静けさが祈りを呼ぶ。
その循環が「杜(もり)」という形になった。
🪵 神と木のあいだ
古来、日本では木そのものが神とされてきた。
巨木には注連縄が張られ、
その根元には石が置かれ、祈りが捧げられる。
木は動かず、語らず、
けれど確かにそこに“在る”ことで、
人に時間の流れを教えてくれる。
コナラの森が人の暮らしの近くにあるのは、
火や木材のためだけではない。
祈りのために必要な“静けさ”を与えてきたからだ。
🌾 杜のいま
都市の拡張で森が減っても、
神社の境内だけは緑を保っている。
コンクリートの中に残る小さな森は、
街の空気を和らげ、命の循環をつなぎとめている。
夕暮れの鳥の声、風の匂い、
人の息づかいの向こうに、
今も森の祈りが続いている。
🌙 詩的一行
祈りは、風よりも静かに森を満たす。
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