🌳コナラ20:クヌギ ― 炭と虫を呼ぶ木 ―

コナラシリーズ

― 森と人をつなぐ樹 ―

分類: ブナ科コナラ属(Quercus)
学名: Quercus acutissima
分布: 本州・四国・九州の低地・丘陵地
樹高: 15〜25m
葉の特徴: 細長く大きな鋸歯をもち、厚みのある葉
果実: 大きなドングリ(翌秋成熟)
樹皮: 黒褐色で深い裂け目
生育環境: 日当たりの良い里山・薪炭林
利用: 炭材・薪・昆虫採集木
備考: 樹液が多く、昆虫を呼ぶ木として有名

夏の夜、樹液の香りに誘われて虫たちが集まる。
秋の終わり、薪となって炎の中に姿を変える。
クヌギは、森と人と虫を結ぶ古い友人のような木だ。


🌿 外見

クヌギは、コナラよりも幹が太く、高く伸びる。
樹皮は深く裂け、黒みを帯びた厚い層になっている。
葉は長くて鋸歯が大きく、
冬になってもすぐには落ちず、
枝先に枯葉を残して立ち続ける。

この独特の姿は、里山を歩けばすぐに見つけられる。
明るい場所を好み、
萌芽再生も盛んな典型的な“薪炭林の木”だ。


🔥 炭と人の記憶

クヌギの木は、炭にすると非常に火持ちがよい。
かつて日本各地で「白炭」「備長炭」として重宝され、
村の炭焼き小屋にはいつもこの木が積まれていた。
切ってもまた芽吹き、
数十年で再び使えるほどの再生力を持つ。
それが、里山の循環を支え続けてきた理由だ。

火の記憶の中に、クヌギの影がある。
その灰までもが、畑を肥やす命の一部だった。


🪶 虫と森

夏になると、クヌギの樹皮から樹液がにじむ。
その香りは、カブトムシやクワガタを呼び寄せ、
夜の森を賑わせる。
虫たちは樹液を求め、
木は彼らの体に胞子や花粉を託す。
見えない共存のリズムが、
ひとつの木の周りに生まれている。


🌙 詩的一行

火にも虫にも愛された木が、森をつくった。


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