森と私たちは、口の中でつながっている。
人は、森の一部を食べて生きている。
きのこを口にするとき、
それは単なる食材ではなく、森の記憶を受け取る行為だ。
シイタケの香りには木の時間が、
ナメコのぬめりには雨の記憶が、
マツタケの匂いには土の深呼吸が染み込んでいる。
森を食べるということは、森に還る約束を思い出すこと。
きのこは分解者であり、再生者でもある。
それを食べる私たちもまた、
その循環の中でほんの一瞬を生きている。
命をいただくとは、
その輪の中に自分を置くということだ。
だからこそ、人はきのこを前に静かになる。
それは感謝でもあり、祈りでもある。
森の底で働く無数の菌糸に、
私たちは知らぬうちに支えられている。
きのこを食べることは、
森と再び会話すること。
「いただきます」という言葉には、
森への返事が、確かに宿っている。

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