― 海の中には、はっきりとした境界がある。岩礁と砂地、潮が当たる場所と当たらない場所、浅場と深場。その“境”を行き来しながら、カニは自分にとって最適な場所を選び続けている ―
カニは決して海のどこでも同じようには暮らさない。岩場が必要なとき、砂地が必要なとき、潮の高さがちょうどいい時間帯など、行動は環境の境目に左右される。ここでは、カニが“境界を越える理由”を、地形・潮汐・行動の3つから整理する。
🦀目次
1. 岩礁と砂地 ― 境界がつくる生き物の分布
海底には岩場と砂地が接する部分があり、そこには多くの生き物が集まる。
- 岩礁:隠れ場所が多く、付着生物が豊富
- 砂地:潜るカニや小動物が多い
- 境界:両方の餌が集まりやすい“豊かな帯”になる
- 潮流が当たり、酸素や餌が供給されやすい
境界には、生き物が集まる理由がいくつも重なっている。
2. 潮間帯 ― 一日の中で姿が変わる“動く境界”
潮間帯は、満潮と干潮で環境が変わる場所だ。
- 満潮時:水中の環境になる
- 干潮時:岩や砂が露出する
- 温度・湿度・光の変化が大きい
- 生き物が移動するための“動く舞台”になる
潮が動くたび、境界が前後に動き、そこを使う生き物も移動する。
3. カニが境界を行き来する理由
カニは環境の境界を利用することで、生き残る確率を高めている。
- 餌の種類が豊富:岩場・砂地の両方の餌を選べる
- 天敵回避:危険を感じると岩陰へ、採餌時は砂面へ
- 潮の動きに合わせた行動:潮位で行動可能域が変化
- 温度・湿度の調整:乾燥しすぎる場所から移動して調整
境界は“選択肢の多い場所”であり、カニがよく使う理由がここにある。
4. 境界を使い分ける種ごとの生き方
カニは種によって、境界のどこをどう使うかが大きく異なる。
- イソガニ類:岩場の隙間を使いながら干潮で砂面に出る
- スナガニ類:砂地中心だが、岩場近くの湿った場所を利用する
- ワタリガニ類:潮流が強い境界を利用して移動する
- 小型種:境界の陰や貝殻片の下を使い分ける
境界の“どこに強い”かが、そのカニの行動や暮らし方を形づくる。
🌙 詩的一行
海が線を引くたびに、生き物たちの小さな道がそっと重なっていく。
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