🦀蟹17:カイカムリ ― 海をまとう者

カニ(海)シリーズ

― 背中に貝殻やスポンジをそっと載せ、まるで“海の一部”になったように歩く。カイカムリは、体より大きなものを背負う独特の習性を持ち、姿を隠すための道具としてそれを巧みに使いこなす ―

浅い海の砂地・岩礁・藻場に広く生息し、背負う材料は場所によって異なる。貝殻・海綿・海藻の切れ端など、手に入るものを利用するが、これは単なる“飾り”ではなく、生存のための戦略だ。ここではカイカムリの特徴、生態、行動を図鑑的に整理する。

📘 基礎情報

  • 分類:節足動物門 甲殻亜門 十脚目 カイカムリ科
  • 学名:Lauridromia dehaani(※地域差あり)
  • 分布:本州〜南西諸島の浅海・砂地・岩礁・藻場
  • 生息環境:浅海の砂底〜岩礁域、海綿が多いところに多い
  • 大きさ:甲幅3〜7cm前後
  • 食性:貝類・小型甲殻類・有機物・海綿片など
  • 特徴:背中に物を背負う「背負い行動」が最大の特徴

🦀目次

1. 背負うための“道具”を持つ ― カイカムリの特徴

カイカムリは背中に物を固定する構造が発達している。

  • 後脚の一部が“鉤爪”状になり、物を挟んで背負う
  • 甲羅は丸みがあり、背中の物を安定させやすい形
  • 体色は砂〜白〜薄茶系で、海綿や貝殻に紛れやすい
  • 歩行はゆっくりで、隠れる行動を重視

“背負う”ことを前提に進化した数少ないカニと言える。

2. 背負う理由 ― 隠れる・守る・まとまる

カイカムリが背負うものには明確な理由がある。

  • 擬態:背中の物が体を覆い、外敵から目立たなくなる
  • 防御:貝殻や海綿が外部からの攻撃を防ぐ
  • 環境適応:海綿を背負うと有害物質の防御効果を得られる例も
  • 移動時の遮蔽物:身を隠しながら移動できる

背負うことは、単なる“行動”ではなく、生存戦略そのものだ。

3. 食性と行動 ― 海綿との関わり

カイカムリは海綿の多い場所でよく見られ、背負う素材として海綿を使うことも多い。食性は雑食だが、海綿片を噛むこともある。

  • 貝類・小型甲殻類・死骸をつまんで食べる
  • 海綿片をかじる行動も確認されている
  • 活動は夜間にやや増える
  • 危険を感じると背負った物ごと身を低くして隠れる

海綿との関わりが深く、海綿の分布が生息地を左右することもある。

4. 人との関わり ― “背負うカニ”としての人気

カイカムリは観察者・ダイバーに人気が高く、SNSなどでも“かわいいカニ”として話題にされる種だ。

  • 背負う姿がユニークで写真映えする
  • 観察会や水族館でも紹介される定番種
  • 地域によっては“海綿ガニ”と呼ばれる
  • 生態系では海綿類と砂底・岩礁のつながりに役立つ

独特の姿は、海の多様性を伝える存在としても重要だ。

🌙 詩的一行

海の欠片をそっと背にのせて、小さな影が静かな底を歩いていく。

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